研究課題/領域番号 |
15K02653
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
加藤 好崇 東海大学, 国際教育センター, 教授 (20297203)
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研究分担者 |
宇佐美 まゆみ 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 日本語教育研究領域, 教授 (90255894)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 観光接触場面 / ツーリスト・トーク / オモテナシ / ホスト / ゲスト / ポライトネス理論 / 言語管理理論 / 外国人観光客 |
研究実績の概要 |
<目的>外国人観光客が2016年度には過去最高の2000万人を超え、ますます日本人ホストと外国人ゲストが接触する「観光接触場面」が増加している。こういった現状の中で、本研究は日本人ホストと外国人ゲストのコミュニケーションにどのような問題が生じているのか、また、問題をどのように軽減でき、そしてより両者が満足するコミュニケーション場面をどう創造できるかについて分析・考察することを目的としている。 <研究実績の概要>2016年度は当初の計画以上の拡がりがあった。 本研究の目的は観光接触場面の問題の発見とその軽減の方法の開発にあるが、その一つの解決策として、コミュニケーションの媒体をゲストの母語やリンガ・フランカとしての英語ではなく日本語そのものに求めるという試みを開始した。これはヒューマン・アカデミー株式会社、株式会社電通との産学連携事業「やさしい日本語ツーリズム研究会」に東京外国語大学荒川教授と共に参加し、九州柳川市で台湾人旅行者に対して「やさしい日本語」でおもてなしをするというものである。本執筆者も観光接触場面におけるツーリスト・トークの研究者として参加し、当初の予定通り九州でのデータ収集を柳川市で実施した。ここではやさしい日本語が使われて観光案内をする場面を複数録画しており、2017年度中には発表するつもりである。 さらに、今回はロシア人研究協力者を見つけることができ、彼女の京都・奈良旅行に同行し、日本人とのコミュニケーション場面をビデオ録画することができた。この会話内容についても現在分析中である。また、学会等での発表を数回実施しているが、2020年が近づくにつれて観光接触場面を意識する人が増えてきたためか、会場の聴衆者も増えてきている。その他にもツーリスト・トークの研究ということで興味を持つ研究者もおり、多くの人の意識に上るような研究対象となってきたと感じる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定以上の展開があったところと、予定通りいかなかったところがある。 まず、予定以上の展開については、「研究実績の概要」について述べたとおり、産学連携事業「やさしい日本語ツーリズム研究会」を立ち上げ、本研究の一つの課題であった言語媒体選択についての新たな試みを行った。具体的には外国人旅行者に対して「やさしい日本語」という媒体を使用してコミュニケーション、そしてオモテナシをしようとするもので、柳川市の観光業に関わる人々の参加を得て実施された。改善点は多々あったものの、今後の観光接触場面のオモテナシ創造に向けての大きな一歩だったと思われる。 予定通りいかなかった点としては、当初オリンピック後のブラジルの観光接触場面調査を行う予定であったが、費用の不足により断念せざるをえなかった。また、中部地方の調査も同様の理由で実施できなかった。 しかし、学会等の発表については、国内のみならずバリ、タイなどの国際大会でも行われ、概ね予定通り、あるいはそれ以上に実施できたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な推進方策はこれまでと同様であるが、観光接触場面の調査をこれまでのように宿泊施設に限定せず、より多様な接触場面を調査対象としていきたい。ただし、宿泊施設では比較的長時間観光客が留まるため,コミュニケーションに関するデータ収集を行うことが比較的容易であるが、宿泊施設以外の場面ではなかなか難しく、その研究方法を考え直す必要がある。 また、研究結果がある程度出てきたところで,これを現場にどのように還元していくかについても考え始めなければならない。一つの方法として、2017年度はホームページを作成し、研究結果をより多くの人に公開することを考えている。また同時にホームページには外国人観光客に対するアンケートができる機能も盛り込み、情報発信と共に情報収集も行う。 その他、結果を還元する方法としては行政の力を借りることもできるが、より現場に直接情報伝達ができる方法を考えていくことが今後の課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初出張予定であった中部地方の調査が、その他の業務との関係で時間がとれず実行できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の休暇期間に中部地方、北海道での調査を行い、そこでの旅費と謝礼等で使用する。
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