平成31年度は、これまで本研究で実施してきた調査や実験の結果を基礎として、ディスレクシアを抱える学習者に教室で適切に対応可能な日本語教員を要請できるプログラムの開発を試行を通して実施した。 具体的には、参加者の態度変容を目的として、①視聴覚教材を活用した教員養成プログラムの実施、②シミュレーション活動を組み込んだ教員養成プログラムの実施を行い、視聴覚教材に関しては、視聴させる教材のタイプ(認知―理解を重視した講義型の教材か、ストーリーのある教材か)によって、参加者の態度変容に違いがみられることを明らかにし、実際の講義を行うことが前提の教員養成プログラムの場合、ストーリーのある視聴覚教材の使用のほうが効果的であることがわかった。また、シミュレーション活動を組み込んだ場合には、活動のインパクトが強いため、事前活動を綿密に実施すること、事後にデザインされたデブリーフィングが必要であることを明らかにした。 ディスレクシアを抱える学習者の日本語教育支援については、コンピュータを利用したゲーム型の教材を開発し、「音」「意味」「字形」を結びつけるための、繰り返し練習が効果的であること、単漢字を導入するよりも、文章中の語彙として導入するほうが効果的であることの示唆を得た。しかしながら、学習者がディスレクシアかどうかの判定に関しては、まだ課題が残っており、単に読みの発達が遅い学習者なのか、ディスレクシアであるのかについては、今後の研究により、判別していく必要がある。ただし、日本語教育の現場においては、読みに困難を抱える学習者の支援という意味で、本研究は有意義であったと思われる。
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