研究課題/領域番号 |
15K02660
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
森本 豊富 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (30230155)
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研究分担者 |
坂口 満宏 京都女子大学, 文学部, 教授 (30298682)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シアトル國語学校 / タコマ日本語学校 / 布哇教育会 / 日本語讀本 / Hawaii Japanese Center |
研究実績の概要 |
昨年度に続き、ワシントン大学で同大学図書館所蔵資料の継続調査を行った。また、Hawaii Japanese Center所蔵日本語学校教科書の整理、ハワイ大学マノア校のハミルトン・ライブラリー所蔵教科書および日本語学校関連資料の閲覧、複写を行った。 ワシントン大学東アジア図書館所蔵タコマ日本人会関連資料の調査では、6月に森本が主な資料をスキャンしPDFで保存した。タコマ日本人会資料、日本語学校関連資料にの他に明治28年発行の旅券なども含まれていた。 5月に森本がHawaii Japanese Center(布哇日系人会館)を訪れ、同センター所蔵の日本語教科書のうち、1936年、37年に発行された布哇教育会発行の「日本語讀本」19冊と、戦後の教科書のうち1956年、57年に発行された「にっぽんご」5冊をスキャンし一覧を作成した。 8月には森本、坂口がHawaii Japanese Centerで調査を実施した。森本は、前回5月に閲覧・スキャンしたものも含め、戦前の教科書の分類を行い、一覧を作成した。坂口は、布哇日系人会館において調査しデジタルカメラ撮影した。ハワイ島にあった日本語学校や高等女学校の校友会誌、同窓会名簿を多数入手することができ、日本語学校で学んだ学生たち一人ひとりの個性やその後の進路を追跡する基礎ができたといえる。また、布哇日系人会館に寄贈された個人資料の中から1941年12月の日米開戦当時のことを記載した日記、アメリカ本の収容所からハワイへ帰還してくる過程を記した手記、1950年代~80年代にかけての熊本同志会の活動記録(部分)などを見出すことができた。これらはいずれも断片的なものであるため、歴史を書き換える新たな発見というレベルのものではないが、数少ない体験記の実物として貴重なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、1920年代から30年代にかけて北米・ハワイ各地で編纂された日本語教科書『日本語讀本』の編纂過程と内容を分析すると同時に、同時代に編纂された文部省国定国語教科書(『尋常小学讀本』等)と比較することが目的である。 現在までのところ、シアトル、タコマでの調査において、当時使用されていた国定教科書や現地で編纂された教科書に限らず、当時の日本語学校でどのような授業が行われていたかを知る手立てとなる貴重な資料が見つかった。その点は大きな成果であった。 ハワイのホノルルとヒロにおいて、現地で編纂された多くの教科書に触れることができたが、その多くは戦後編纂されたものであった。また、ハワイにおける初期日本語教科書については、さらなる調査が必要である。また、シアトル・タコマおよびハワイで作成した目録を精緻化していく必要がある。 カリフォルニア州における調査は本年度に持ち越した。また、シアトル・カリフォルニア、ハワイで編纂された教科書の内容分析と比較研究、さらに国定教科書との比較についても今後の課題として残っている。
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今後の研究の推進方策 |
シアトル・タコマ、ホノルル・ヒロで実施した調査の整理と補足調査を行うと同時に、カリフォルニア州での調査に手を付ける。また、それぞれの『日本語讀本』の内容分析を進めるとともに、同時代に編纂された国定教科書との比較を行っていく。そのために、国会図書館、東書文庫での教科書調査も実施する予定である。 また、シアトルでみつかった日本語教科書以外の副読本や生徒の授業活動記録などを通して、日本語学校での授業の様子を伝える資料の分析も進めていきたい。ハワイ、カリフォルニアでの類似の資料発掘にも努力していきたい。 また、本年11月に予定されているスタンフォード大学フーヴァー研究所での第1回ジャパニーズ・ディアスポラ・イニシアチブ・ワークショップにおいて、現在まで明らかになっている点について研究発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた額から若干余りが生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の旅費などに追加して支出することを計画している。
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