研究課題/領域番号 |
15K02665
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
清田 淳子 立命館大学, 文学部, 教授 (30401582)
|
研究分担者 |
宇津木 奈美子 帝京大学, 帝京スタディアブロードセンター日本語予備教育課程, 講師 (90625287)
高梨 宏子 東海大学, 東海大学課程資格教育センター, 助教 (90748542)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 言語少数派生徒 / 母語による学習支援 / 教科学習支援 / 地域の母語支援者 |
研究実績の概要 |
本研究では、言語少数派生徒の教科学習支援において、「地域の母語支援者」(地域に定住し、子どもと母語を同じくするバイリンガル支援者)に着目する。本研究の目的は、1.「地域の母語支援者」による授業の特徴を明らかにすることで、学習支援の担い手としての可能性を追究する、2.「地域の母語支援者」が主体的に教科学習支援を遂行するにはどのようなサポートが必要であるのかを提示する、の二つである。 このような研究目的に対し、初年度の27年度の成果として、以下の3点を挙げる。 1. 神奈川県下の公立中学校にフィールドエントリーし、平成27年5月から平成28年3月にかけて、母語を活用した学習支援を継続的に実施し、教室談話データを収集した。学習支援の実施に際しては、「地域の母語支援者」の確保に向け、学習支援経験の豊かな「地域の母語支援者」のネットワークを活用することで、新規の参加者を得ることができた。 2. 「地域の母語支援者」の育成に向けては、協働で学習支援を行う日本人支援者に加え、学習支援経験豊かな「地域の母語支援者」がサポート役を務めることで、学習支援の周辺から中心へと段階を踏んでいく参加システムがより重層的なものとなった。 3. 学習支援経験の長い「地域の母語支援者」を対象に、自身の成長、活動の広がり、新規参加者に対する関わり方等についてインタビュー調査を行った。一方、新しく参加した「地域の母語支援者」を対象に、参加動機、学習支援での戸惑いや葛藤、望ましいサポート等についてインタビュー調査を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」の項で示したように、国際教室を持つ公立中学校へのフィールドエントリー、経験者に加えて新規の「地域の母語支援者」の参加を得ての学習支援の継続的な実施、「地域の母語支援者」へのインタビュー調査についてはおおむね順調に進んでいる。特に「地域の母語支援者」については、経験者・新規参加者双方の参加を得ることで、人的ネットワークの広がりの様相、新規参加者へのサポート体制作り、に見通しを持つことができた。 また、教室談話データについても順調に収集が進んでいる。 さらに、インタビュー調査の結果、ある一つの学校で母語による学習支援を行っていた「地域の母語支援者」が、複数の学校で学習支援を行ったり、公民館や交流ラウンジなど地域の拠点で学習支援活動のリーダーになるなど活動の幅を主体的に広げていったことからは、本研究を生涯学習の観点からとらえ返すという可能性も得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き同中学校の国際教室で「地域の母語支援者」とともに協働体制で学習支援を行いつつ、以下の項目について分析を進め、成果をまとめる。 1. 「地域の母語支援者」による教科学習支援の特質を、授業談話データをもとに分析する。その際、「地域の母語支援者」の授業と大学院留学生の行った授業との比較や、経験者と新規参加者の授業を比較することで、教科学習支援の担い手としての「地域の母語支援者」の可能性を検討する。 2. 「地域の母語支援者」に対する、協働実践を行う日本語支援者からのサポートと支援経験のある母語支援者からのサポートについてその実態と異同を明らかにする。また、これらのサポートを受ける「地域の支援者」の意識をインタビューデータをもとに検討する。 3. 「地域の母語支援者」に対するインタビュー調査結果を、支援を継続する動機、母語を活用した学習支援に対する意識の変容、教師の成長や生涯学習の観点から検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
「次年度使用額」に残額220,142円が生じた理由は、言語少数派生徒の母語を活用した学習支援について、教室談話データの収集は順調に進んだものの、それらの文字起こし及び翻訳作業に着手できなかったことによる。そのため、当初計上していた「人件費・謝金」(300,000円)を全額執行するには至らなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
2016年度は、前年度の残額を今年度の「人件費・謝金」の額に合算し、教室談話データの文字起こしと翻訳作業に使用する予定である。その上で、「今後の研究の推進方策」に述べたように、「地域の母語支援者」による教科学習支援の特質を明らかにしていく。
|