研究課題/領域番号 |
15K02666
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
池田 佳子 関西大学, 国際部, 教授 (90447847)
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研究分担者 |
BYSOUTH DON 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (20603129)
山本 英一 関西大学, 外国語学部, 教授 (40158267)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 反転授業 / 日本語教育 / ICTを用いた教育 / 言語習得 / 個人差 |
研究実績の概要 |
大学の国際化が近年強化され、今後もさらに展開する中、高等教育機関で学ぶ外国人留学生数は増加してきている。彼らの日本における学習目的や進学ルートは複線化しており、英語だけで進学・卒業するトラックも存在する。この現象は、彼らの日本語学習の必要性も多層化・複雑化することを意味する。今後も受入学生を増やす施策を推進する大学では、この状況に応じた日本語教育カリキュラムの再考の機運が高まっている。例えば短期間における日本語の習得や、専門分野に相応しいコミュニケーション能力・相互行為能力の養成など、多様な日本語能力の需要に対応できる教育プログラムが求められている。その一方で、日本国内の大学における授業体系は従来通り90分単位の講義を基本とした授業時間数での設計となっており、限られた授業時間数の中でこのような多様な能力養成を実現させなければならない、という検討課題がある。 本研究では、国内の留学生受入拡充により学習者のニーズと習得プロセスが著しく多様化・複雑化した日本語教育の現状に対応すべく、自習時間にデジタル教材などで講義を受講し、授業時間に応用・演習を行う「反転授業型学習」に基づく新しい教育実践モデルを考案・検証し、最終的に新しい日本語教育カリキュラムのモデルを提唱する。日本語授業の3段階の言語レベルで反転授業型学習を試行的に実施し、科目受講者の①基礎言語学的運用能力②コミュニケーション能力③漢字習得などのリテラシー能力の発達を1年間にわたり縦断的に追跡調査を行うことで従来のカリキュラムの受講者との比較検証を行う。反転授業の導入により第二言語能力のどの側面の習得が促進され、抑制されるのかを解明し、その短所を補填した教育実践も同時に提案する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
従来の計画では、平成28年度中に初級・中上級・アカデミック日本語の3クラスを「実験群」とし、言語習得過程の定量的・定性的比較検証を行うため、従来のカリキュラムで学習する同レベルの学習者グループ(「統制群」)も設定する予定であった。初級教材の作成過程に遅延が生じ(アルバイト学生の都合など)、実験群の3段階の設置に時間がかかったため、実際の主な調査対象となる能力の測定は平成29年度に持ち越しとなった。現時点では、一部既存の講義動画なども活用し、初級、中級、上級の3段階においてeLearning教材(反転授業用)が準備できている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に、①基礎言語学的運用能力(語彙・文法/音声)②コミュニケーション能力(相互行為能力/社会言語的言語運用)③リテラシー能力(日本語表記の読解・記述)の3つの側面の伸長を測定するため、実験群である3つのクラスの受講者に対しOPI(CBT化されたもの)テスト、J-CATテスト(日本語能力試験に準じている)、および独自で作るリテラシー能力測定テストを用いて、学習者の伸長を確認する。 分析の途中経過については、平成29年7月に予定されている国立国語研究所における日本語教育に関するシンポジウムの登壇の際に発表を行い、下半期となる10月の留学生教育学会でも成果発表を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、海外での成果発表を計画していたが、所属大学における業務との都合がつかず、断念せざるを得なかったため、その予算が繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、海外での成果発表を計画している。また、反転授業の活用に関するシンポジウムを国内で開催し、専門家の招へいを行う計画をしている。7月には国内における発表も予定されており、一部出版(海外、英文校閲)などにも予算を支出することとなる。
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