本研究では、2つの実践を行っている。母語話者と継承語学習者をICT(ipad)でつなぎ、ビデオレターを交流することによって子どもたちの母語学習のモチベーションを高める取り組みである。1つ目は、中国語を学習する山形市の地域の中国語教室(途中から神戸市の中国人集住地域の小学校に変更)と台湾台南市の小学校の子どもたち、新潟大学の中国語サークルに所属する大学生との交流である。映像は、非公開のfacebook上にアップロードし、コメント機能を使って交流を行った。日常会話もままならないレベルの子どもたちであるが、台湾の子どもたちの中国語を「わかりたい」「自分も話したい」という意欲が徐々に強くなり、何度も映像を取り直しては、アップロードしたり、映像を見てコメントをしたりする姿が見られ、学習意欲の高まりだけでなく、自己達成や自尊心(中国語を話す自分をよしとする気持ち)を感じていることが明らかとなった。また大学生たちは映像に創意工夫を重ね、主体的な発信を継続的に行った。 2つ目は、韓国在住の国際結婚家庭の子どもたち(日本語は継承語)と近畿大学の日本人大学生との日本語の交流である。語学研修前のプレ交流として計7回の交流をGoogle ドライブ上で行った。子どもたちが「日本語を話したい」という意欲を持つことはもちろん「母語学習の助けをしている」「やさしい日本語の大切さに気付く」「協働活動の醍醐味を知る」など日本人大学生側にも大きな学びが観察された。 2つのビデオレター交流を通じて、ICTを利用した交流は、その遊具性や新鮮さ、映像の再現性、カスタマイズ性、インパクトなど多くの長所を生かした充実したものとなった。母語を学ぶ意欲が薄いと言われるマイノリティ言語話者の母語教室に一定の貢献ができたと考えられる。課題は、継続した実践とビデオレター交流に応用可能な母語カリキュラムの作成である。
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