研究課題/領域番号 |
15K02673
|
研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
渡辺 浩行 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (40275805)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | インタラクション / 文脈化 / 文脈の個別化 / 文脈の共有化 / 話題設定(選択)と話題展開 / インタラクションのIRF構造 / 言語学習の意味・形式・機能 / 機能重視 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,英語授業における児童生徒と教師の豊かなインタラクションに必要なインタラクションの文脈化,個別化,共有化(3つの化)を特定することである。文脈化とは適切な話題設定(選択)と話題展開で,個別化とは文脈化を個々の児童生徒に合せ,共有化とはそれを児童生徒が授業で共有できようにすることである。 平成27年度の研究は,①インタラクションのIRF構造を用いて「3つの化」を分析することとなった。IRF構造とは,児童生徒に対する教師の働きかけ(I:Initiation),それに対する児童生徒の反応(R:Response),その反応に対する教師の返し(F)になる。②この3つの要素によって小中高約180授業の分析をした結果,「3つの化」を図るI,R,Fが認められる授業が極端に少ないことが分かった。しかし,数少ないながら,それをめざす授業の分析から本研究の目的が達成できることも確認できた。 平成28年度では,引き続きインタラクションのある授業を分析することにした。そこで新たに,①インタラクションの無い授業,インタラクションはあるが「3つの化」が乏しい授業,インタラクションに「3つの化」が豊かな授業の3種類の授業を分析、比較し、その原因を探る必要が出てきた。その主な原因として,②インタラクションの軽視(重視)、授業中の役割と位置づけ,教材(教科書)との兼ね合いが特定できた。また,③「3つの化」がうまく展開されない大きな要因として,言語学習における形式(文法・語彙など)偏重が機能(文脈・状況・場面など)軽視をもたらしていることも明らかとなった。英語授業のインタラクションに「3つの化」を取り込むためには,インタラクションのIRF構造が言語機能を重視したものでなければならないという結論に達した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,「授業における児童生徒と教師の豊かなインタラクションに必要なインタラクションの文脈化,個別化,共有化(3つの化)を特定する」ことである。しかし,研究過程で,「3つの化」を妨げる原因・要因も特定する必要があり,これまでに分かったことは次の4点で,①インタラクションの軽視、②授業中のインタラクションの役割と位置づけ,③インタラクションの教材(教科書)との兼ね合い,④言語機能(文脈・状況・場面などの)軽視である。 したがって,「3つの化」を妨げる原因・要因からも小中高の英語授業をあらためて分析する必要が出てきた。すでに視聴分析はある程度進んでおり,その分析対象授業として,研究代表者がこれまで集めた小中高の外国語(英語)録画授業に加え,文科省配布小中高モデル授業DVD,文科省「英語教育推進リーダー中央研修」DVD教材,英語教育推進中核教員養成研修の研究録画授業,全英連公開授業等である。28年度は,「3つの化」が認められない,あるいは弱い授業の原因・要因を確認したうえで,「3つの化」が認められる授業を厳選し,IRF構造の分析によって,その「3つの化」がどのように実現されるかを明らかにすることができた。 なお,平成27年度同様,平成28年度も研究成果を学会で報告・発表する予定であったが,研究成果を学会誌発表や著書にすることとなり(平成29年に発行予定),そちらの準備を優先させることになった。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度である平成29年度は以下の(1)~(3)を実施することになる。(1) 平成28年度までにおこなってきた方向での研究推進。(2) 研究のまとめ。(3) 研究成果の著書刊行。なお,研究のまとめにあたっては,次の項目を押さえるようにする。①インタラクションの文脈化,個別化,共有化(3つの化)がない授業の特徴②インタラクションの文脈化,個別化,共有化(3つの化)がある授業の特徴③その特徴の原因・要因の記述④「3つの化」がインタラクションのIRF構造でどのように展開されるかの記述。
|