研究課題/領域番号 |
15K02675
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
田中 江扶 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (40524294)
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研究分担者 |
鈴木 俊太郎 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (10548233)
島田 英昭 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (20467195)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 動機づけ / 英語 / 信念 / 心理学 |
研究実績の概要 |
グローバル化の中で英語教育のニーズが高まっている。英語の上達のためには授業や研究の時間だけでなく、継続的な自習が重要である。平成28年度は、平成27年度に収集したデータを参照しながら、継続的な自習を促すために、動機づけの期待理論に基づき英語または英語学習に対する信念の構造を明らかにして、継続的な自習を促す種の信念を明らかにした。 大学生を対象としたインターネット調査を行った(N=519)。英語・英語学習に対する信念として、平成27年度のデータをもとに効力期待(随伴性の認知)と結果期待(価値の認知)に分けて尺度を作成し、因子分析を行った。その結果、努力随伴性(例:英語の勉強をしっかりすれば,英語が実用的に使えるようになる)、能力随伴性(例:英語をいくら勉強しても,才能がなければ上手にならない)、結果期待(例:英語は日常のさまざまな場面で役立つ)の因子を抽出した。これらを独立変数、英語学習の自己効力感尺度として、継続的な英語の自習ができるかどうかの自信を評価する項目(例:英語の勉強時間は長い方だ)を従属変数として、重回帰分析を行った。その結果、能力随伴性が自己効力感に影響していることが示された。また、努力随伴性についても一定の効果がみられたが、結果期待についてはみられなかった。ここから、継続的な英語の自習を促すためには、第1に能力随伴性の信念、第2に努力随伴性の信念を修正することが効果的であることが示唆された。この結果は、日本教育心理学会第59回大会において発表される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は自律性と信念の関係を明らかにする予定であったが、平成27年度の結果から、自律性と信念の概念を分離することが難しいことが明らかになった。一方で、動機づけの期待理論の枠組みから持ち込んだ信念が、内的あるいは同一化的といった高い自律性を持つ個人の特性と関係することが明らかになった。そこで本研究は、あらためて信念を動機づけの期待理論の枠組みで定義し、その構造を明らかにすることに計画を変更した。その計画については、努力随伴性、能力随伴性、結果期待の3因子構造を明らかにすることができ、十分に達成できた。また、ここから当初は想定していなかった英語4技能の分離に進む予定であり、この部分については想定以上に進んでいる。以上から、当初の計画についてはその困難が明らかになったことから難しいが、あらたな問題について想定以上の進捗が見込まれ、総合的に順調に進捗していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に得られた努力随伴性、能力随伴性、結果期待の3因子について、現在では英語全体で同一の信念を仮定しているが、これを4技能(聞くこと、話すこと、読むこと、書くこと)に分離して評価する予定である。これにより、近年重視されつつある聞くこと、話すことが、従来から英語教育で扱われてきた読むこと、書くことに比べ、どのように信念が異なるのか、明らかにすることができる。また、平成27年度調査ではこれらの信念と自律性の関係があきらかにされたが、信念の構造と評価項目が平成28年度調査で明らかにされたものに変更されているため、信念と自律性の関係をあらためて明らかにする。また、可能であれば、参加者を大学生に現在は限定しているが、これを一般のビジネスパーソンに展開したい。なお、調査はインターネット調査をメインで進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の想定以上に信念が複雑であったことから、信念を評価する項目選定を、内容妥当性に照らし合わせて慎重に行った。その結果、インターネット調査の時期がずれ込み、資金の繰り越しを行うことになった。また、インターネット調査が当初の想定よりも安価で可能であったことも理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度請求額と合わせてインターネット調査を追加で行う。当初想定していなかった範囲まで対象を広げて調査を行う予定である。
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