研究課題/領域番号 |
15K02678
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
日野 信行 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 教授 (80165125)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 国際英語 / ELF / EIL / EMI / 教授法 / CLIL / CELFIL / OSGD |
研究実績の概要 |
高等教育で専門科目を英語で教えるEMI授業において、専門科目の内容と同時に、母語話者の言語文化の枠を超えた国際英語(ELF)を習得するための方法論の構築に引き続き努め、当該の教授法の具体像を描いた。 この中で、CLILの理念の援用により本研究で提唱するCELFIL (Content and English as a Lingua Franca Integrated Learning)の教授法について、Anthonyの枠組みであるApproach・Method・Techniqueの形で描出した。たとえば、CELFILの手法の一環として提案したOSGD (Observed Small Group Discussion)の詳細な手順とその意義について明らかにした。ダイナミックかつ流動的なELFのインタラクションにおけるコミュニケーション能力を、EMI授業において効果的に習得するための方法である。 多様な大学における多様な学問分野のEMI授業の観察と分析のフィールドワークを行い、CELFILに関し、いくつかの重要な原理を抽出した。 ここまでの研究成果の一端は、別掲のように、国際ELF学会大会での発表、及び国際World Englishes学会(IAWE)共催の国際シンポジウムでの発表等に加えて、世界的に大きな影響力を有する国際学術出版社Springerの単行本 English as a medium of instruction in higher education in Asia-Pacific の章として、及び同じく顕著な影響力を有する国際学術出版社 Multilingual Mattersの単行本 Preparing teachers to teach English as an international language の章として、発表することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、前年度の課題として残った「言語学・文学・教育学以外の学問分野のEMI授業の観察と分析」をも実現することができ、貴重なデータを収集した。大学において工学・数学・経営学・美術史などを英語で教えるクラスである。これにより、分野ごとの学問的性質や教育的伝統に応じた教育法、及び個々の分野に依存しない普遍的な側面について考察することができた。 EMI授業において国際英語(ELF)の能力を養うメソッドとしてのCELFILについて、具体的に記述する作業を進展させることができた。 ここまでの研究成果については、たとえば、国際ELF学会大会において、CELFILをApproach・Method・Techniqueの3階層に分けて提案した等、世界レベルで発表した。特に、国際学術出版社Springerの単行本 English as a medium of instruction in higher education in Asia-Pacific における"The significance of EMI for the learning of EIL in higher education: Four cases from Japan"という章として、上記のフィールドワークに基づきCELFILの重要な原理を明らかにし、また同じく国際学術出版社のMultilingual Mattersの単行本Preparing teachers to teach English as an international language における"Training graduate students in Japan to be EIL teachers"という章として、研究代表者自身のEMI授業の実践に基づくCELFILに関して発表することができた。 全体として、おおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
ELF・EMI・CLILに関する欧州及びアジアでの先行研究の精査、さまざまな学問分野におけるEMI授業の観察と分析、研究代表者のEMIクラスにおけるCELFILのアクションリサーチ等を継続する。 CELFILの具体的内容については、ここまでの本プロジェクトでは Anthonyによる古典的枠組であるApproach・Method・Techniqueを用いており、これは狭義における教授法を理論的に記述するのに適しているが、実際の授業での実践に供するためにはシラバスや教材その他の側面も含めて教育方法を総体的に記述するApproach・Design・Procedure (Richards and Rodgersによる枠組)が適しており、今後は発展的にこの後者の枠組に移行し、CELFILの全体像を明らかにしていく。 研究成果の発表予定としては、たとえば、本研究代表者はELFの教育をテーマとする本年度の大学英語教育学会(JACET)国際大会の全体シンポジウムのパネリストとして招聘されている。また、国際ELF学会及びAILA学会など、強い影響力を有する国際学会の本年度大会での発表がすでに内定している。また、国際学術出版社 Springerからの出版作業が進行中の単行本 Towards post-native-speakerism: Dynamics and shifts(仮題)の章"Pedagogy for the post-native-speakerist teacher of English"において、CELFILについて、母語話者主義 (native-speakerism)に抗する理念に立つ教育方法としての視点から論じている。さらに、国際学術出版社Routledgeの単行本での成果発表の作業も進行中である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
EMI授業の観察及び資料収集のために10万円をやや超える旅費の不足が見込まれたため、前倒し請求を行ったが、前倒し請求は10万円単位のため、20万円を前倒し請求することとなり、結果として次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究成果発表のための旅費の一部としての使用を計画している。
|