研究課題/領域番号 |
15K02680
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
高橋 俊章 山口大学, 教育学部, 教授 (00206822)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 冠詞選択 / 困難度 / 要因 / コレスポンデンス分析 / 量的・記述的分析 / 指導 |
研究実績の概要 |
平成27年度に、パス解析や決定木分析を用いて妥当性を検証した冠詞選択のプロセス・モデルに沿って、冠詞選択に必要な判断をする際、学習者が困難を持った判断項目を分析し、その要因を明らかにした。 H27年度の調査データに基づき、冠詞選択が困難だった問題項目、具体的には、プロセス・モデルに沿って正確な冠詞判断ができていない問題項目を対象に記述分析及びコレスポンデンス分析を行った。 分析の結果、無冠詞が正しく選択できない原因として、学習者は、指示が「一般的」と「個別的」の二者択一でなければならないという誤った前提の下、名詞が言及しているものが「個別的」な事物ではないと判断したときにはどのような状況でも定冠詞を誤って使用する可能性が示された。また、冠詞選択に必要な判断が間違っているのに、正しい冠詞を使用できる原因として、指示が「個別的」と判断された場合には、それが「一般的」な意味で使用されているかどうかに関わらず、不定冠詞が使用されるためである可能性が示された。最後にクラスター分析を用い、学習者を英語能力に基づいて高低群に分けたところ、英語能力の低い学習者(大部分を占める)は「特定かどうか+聞き手に知られているか」という基準で定冠詞の選択を行うが、英語学力が非常に高い学習者の場合には、「唯一かどうか+聞き手に知られているか」という基準で定冠詞の選択を行っている可能性があることが明らかになった。 以上の研究結果は、冠詞選択をする際に与える指示(冠詞選択をする上でのヒント)の適正化に役立つと考えられ、その点で研究の意義が十分あったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究計画に沿って、おおむね予定通りに調査を実施した。調査結果に基づき、原稿はすでに執筆しており、平成29年度に英語教育関係の学会誌に投稿の予定である。 ただし、冠詞選択フローチャートの作成が遅れており、そのため調査の実施が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成28年度までの研究結果に基づき、冠詞選択のフローチャートを作成し、その効果を調査する予定である。 具体的には、平成27年度と同等のテストを準備し、以下の3つの条件下で、冠詞選択の効果を比較する。
条件1: 冠詞選択のフローチャートシートのみを渡され、冠詞の選択問題に解答する。 条件2: 冠詞選択のフローチャートシートの使い方について、例題を使って10分程度説明した後に、冠詞の選択問題に解答する。 条件3: 冠詞選択フローチャート無しで、冠詞の選択問題に解答する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査で用いる冠詞フローチャートの作成が遅れているために、調査実施が出来なかった。そのため、フローチャートのチェックのための謝金や調査協力者への謝金の支払いがなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
冠詞フローチャートの作成を前期中には終わらせ、9月までには調査を実施し、冠詞選択における「冠詞フローチャート」使用の効果について調査・分析を行う予定である。
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