研究課題/領域番号 |
15K02681
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
長崎 睦子 愛媛大学, 教育・学生支援機構, 准教授 (90406546)
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研究分担者 |
折本 素 愛媛大学, 教育・学生支援機構, 教授 (20194649)
金子 育世 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (00360115)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 英語教育 / リハーサル / スピーキング / 気づき |
研究実績の概要 |
本研究は,グローバル化に対応した大学生の英語コミュニケーション能力育成のために,特に共通教育初年次において,下記の3つのプロジェクトを行うことを目的としている。 (1)授業と授業外学習を有機的に結び付けた英語スピーキング能力を育成する指導方法の実践と改善(2)ルーブリックの作成・実施と妥当性・信頼性の高い評価法の確立(3)英語習熟度や授業期間が異なる複数のクラスでの実践~普遍的な指導法への発展に向けて 本研究の予備研究として,平成26年度に国立大学1年生の必修英語科目2クラスにて「スピーチ&リハーサル」法を実践し,平成27年度にその効果を検証・成果発表をした。両クラスとも,学期中にひとり8回2分間のスピーチを行い,スピーチに向け週に5回以上リハーサルすることが課題とされた「リハーサル強制」(20名)とリハーサルをするかしないかは自由とされた「リハーサル自由」(19名)グループに分けられた。2種類のスピーキング・テスト(スピーチとナラティブ)をリハーサルの事前・事後に実施し,重回帰分析をしたところ,スピーチ・テストにおいて,リハーサルが強制か自由かは点数の伸びに影響を与えていないが,リハーサルの回数は影響を与えていることが分かった (β = .55; p < .05)。つまりリハーサルをすればするほど,スピーキング力が向上することが示された。この結果については,平成27年度に学会および論文にて発表をした。平成27年度に実施した研究については,「現在までの進捗状況」にて詳しく報告する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究1年目(平成27年度)は,国立大学1年生の必修英語科目3クラスにて「スピーチ&リハーサル」法を実施した。予備研究の内容に,スピーチの「構成」の指導を加え,各クラスは次の3つのグループに分けられた。(1)リハーサル強制+指導(22名):スピーチに向け週に5回以上リハーサルすることが課題とされ,さらにスピーチの構成についての指導を受ける,(2)リハーサル自由+指導(21名):リハーサルは自由とされ,構成についての指導を受ける,(3)リハーサル自由(20名):リハーサルは自由とされ,構成についての指導は受けない。 さらに,予備研究からテスト実施方法と評価法を改善した上で,リハーサルおよび構成に関する指導の効果を検証した。平成26年度の予備研究と同じように,スピーチ,ナラティブの2種類のスピーキング事前・事後テストを実施した。重回帰分析を行った結果,構成についての指導の効果は見られなかったが,スピーチ (β = .33; p < .05), ナラティブ (β = .42; p < .05) の両テストにおいて,リハーサルをするほどスピーキング力が向上していることが分かった。予備研究の結果をふまえ,平成27年度はスピーキング・テストの実施方法および評価方法をより信頼性,妥当性の高いものへと改良した。改善の結果,両テストにおいてリハーサルはスピーキング力の向上に効果があることが示された点は意義深い。本研究の成果発表は,本年度(平成28年)8月に,第55回JACET国際大会にて口頭発表をし,その後論文としても発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度 (平成28年)の研究では,「スピーチ&リハーサル」法の効果を,授業期間が異なる国立大学1年生の必修英語科目2クラスと私立大学3年生の英語1クラスの3クラスを対象に検証する。本年度より,本研究代表者および分担者1が所属する国立大学では,クォーター制が導入された。それに伴い,英語クラスの期間がこれまでのセメスター制での約4か月間から,約2か月間へと変更になった結果,リハーサル期間もほぼこれまでの研究の半分となる。本年度の国立大学英語クラスの参加者らには,昨年度の参加者と同じ回数のリハーサルに取り組めるように課題を設定した上で,昨年度の結果と比較して,リハーサル期間の違いが結果にどのような影響を与えるかを調査する。さらに,私立大学の英語科目1クラスには,通年を通して(約8か月間)「スピーチ&リハーサル」法に取り組んでもらい,長期にわたってリハーサルを行った場合の効果とも比較する。引き続き,評価法の改善にも取り組む。本年度研究の主なリサーチ・クエッチョンは次の通りである。 (1)スピーキングによるリハーサルは,第二言語(英語)への気づきと習得を促すか (2)リハーサルの回数とスピーキング力の伸びとの間に相関関係は見られるか (3)リハーサル実施期間の長さは,スピーキング力の向上に影響があるか 来年度(平成29年度)は研究最終年となるが,予備研究も含めた3年間の実証研究成果をまとめ,普遍性の高い指導法へと発展させる。結果については,学会や論文で発表するだけでなく,ワークショップ(一般公開)を積極的に行うなど,広く成果を発表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究参加者のスピーキング事前・事後テストの評価を複数の英語ネイティブ・スピーカーに依頼する予定であった。しかし,評価の一部を研究代表者および分担者1が所属する大学の英語教員にも依頼することができたため,謝礼金が当初予定したよりもかからなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は,国内および海外の学会にて成果発表をする予定である。そのため,研究代表者および分担者1と,他大学に勤務している分担者2との間で,通信費かかると予想される。平成27年度の残額は,通信費に使用したい。
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