研究課題/領域番号 |
15K02682
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研究機関 | 釧路公立大学 |
研究代表者 |
鈴木 慶夏 釧路公立大学, 経済学部, 教授 (80404797)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中国語 / 教育文法 / 文法シラバス / 投射モデル / 投射性項目 / 文法インストラクション |
研究実績の概要 |
本研究課題は、日本語を第一言語とする中国語学習者が習得上の利益を享受できる文法シラバス(より容易・より早期に目標形式を産出するための文法シラバス)の設計方法の構築を最終目標とし、この目標達成の一手段として、中国語のどのような文法項目が投射性項目であるかを検討する観点から研究を開始した。研究開始時は、中国語の補語(結果補語・方向補語・可能補語)が投射性項目である可能性が高いという仮説が得られていたため、結果補語・方向補語・可能補語という三種類の補語の習得上の難度について学習者調査の実施を予定した。しかし、その調査から意義ある結果を引き出すには、目的語名詞句を文頭に配置する主題化構文の習得が済んでいなければならないことが判明した。そこで、主題化構文の習得を促進させる方法を探ることにした。 主題化構文に関する研究によって、これまでの教育的慣行において一つの文法項目として扱ってきた学習対象を文型レベルで分割・分散することによって、従来は難度が高いと見なされてきた文法項目の難度を抑えられることがわかった。例えば、(1)動詞接尾辞“了”および文末助詞“了”についての研究、(2)“把”構文という文型の中で提示される「文型ごとの補語」についての研究である。いずれの文法項目も、中国語教育において、教授者が最も慎重に導入するものの学習者にとっては最も難しい学習事項である。これにより、学習者にとっての習得難度の高低は、文法項目の種類よりも文法指導法(文法インストラクション)の種類に強く左右されるのではないかという点が示唆された。今後の研究には、文法シラバスの設計方法の構築にとって、中国語のどのような文法項目が投射性項目であるかを明らかにするのはもちろんであるが、それ以上に、どのような文法インストラクションがどのような文法項目にどう影響を与えるかという点を明らかにする必要のあることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初分析対象にする予定であった投射性項目(中国語補語の文法項目としての性質)とは異なる条件(文法インストラクションの性質)に関する研究(特に助詞“了”と“把”構文)に進展があった。本来の研究計画の範囲外の領域で進展があったという状況であり、結果的には、本研究課題が定めた最終目標である「中国語文法シラバスの設計方法」について、理論的・実践的意義を有する考察が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
文法インストラクションのあり方について、従来の慣行である教授法と本研究による試案を比較検討するための考察を推進する。方策として、これまでの慣行である「中国語学における文法研究の成果」を運用する文法インストラクションについて、「文法事項の語レベルでの提示」「抽象的な文法的意味の提示」「中国語学文法論での重要論点」等の観点から分析をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表に要する出張旅費に関して、学内の「全国学会報告旅費」および「短期海外研修旅費」から助成を受けることができ、経費を節約することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度も国内・海外で研究発表を行うため、その出張旅費に充当させる予定である。
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