本研究課題は、中学校および高等学校の現場で英語を教える教員が、(認知)言語学の理論的な知識を持たなくても活用することが可能な、構文の教授法を開発するための基礎研究を行うことを目的としている。特に本研究では、中学・高等学校の英語の授業で必ず扱う、二重目的語構文、五文型、関係詞節、there構文を対象とし、日本人英語学習者と英語母語話者の違いを「出来事の捉え方の違い」という認知的な観点から体系的に研究し、教授法を開発するための基礎研究を行った。
研究最終年度である平成29年度は、平成27年度および平成28年度の研究成果を受けて、五文型と関係代名詞節に関する教授法を開発した。五文型については、平成28年度の研究成果からさらに発展させ、英語の出来事の捉え方の観点から、5つの文型の相互関係を有機的につなぐネットワークモデルを構築した。その結果、現在、教育現場で教えられている第1文型から順番に教えるのではなく、第3文型、第4文型、第2文型、第5文型、第1文型の順番で教える方が、認知的な負荷が低くなることがわかった。さらに関係代名詞節は、「モノとモノの関係に着目する」という出来事の捉え方をする英語において、「モノ」である出来事の参与者に情報を追加する手段であると位置づけ図式化を行った。また、there構文は、英語であるにもかかわらず「場所と存在物の関係に着目する」という日本語の出来事の捉え方に近い捉え方をする構文である。この観点から、there構文を整理しまとめた。 研究成果については、論文にまとめるとともに、大学主催の市民講座「ことばの雑学」において、一般市民に対して講義を行った。なお論文については、2018年度に開拓社から出版予定の書籍に掲載予定である。
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