本研究は、チャンツのメカニズムならびにリメディアル英語教育を必要とする学習者への影響を明らかにし、該当する大学生対象の英語指導に対する教育的示唆を得ることを目的にしている。平成28年度までに、該当大学生を対象にチャンツを用いた音読練習を2回実施し発音などの技能面を検証ならびにL2WTC(英語を話そうとする意欲)など情意面に関する質問紙調査を実施した。平成29年度は得られたデータを分析し、学会で発表した。平成30年度は学会と書籍の発表(29年度記載)に加え、1部を論文にまとめ発表した。 練習回数の平均比較では、5週間で事後の差は確認できず、15週間の音読練習では事後に5%水準で有意な差を確認し、今回は練習量が発音向上に寄与する結果となった。しかし更なる調査が必要である。また、音響分析ソフトで計測した発話の持続時間と英語母語話者による評価スコアの相関を検証した結果、事前・事後ともに負の相関傾向を確認した。これは、持続時間が減少し(発話スピードが上がる)流暢性が増すことによって、英語母語話者はより自然な英語の発音だと認識する傾向があることを示している。 質問紙調査の結果では、外国語教室不安と国際的志向性・L1WTC・L2WTC間において負の相関が見られ、また、外国語教室不安と音読評価のスコアには負の相関があった。またリメディアル英語教育を必要とする学習者は、習熟度が高い群と比較した場合、英語学習に対する不安がより高く、英語を話そうとする意欲や海外に対する興味・関心が低い傾向にあることが明らかになった。一方、事前・事後の比較調査では有意な差を確認できず、チャンツを用いた音読練習とWTC間の直接的な関係を明らかにすることは出来なかった。 練習回数と発音の変化、学習者の習熟度、心理的要因等の関連について本研究期間内に明らかにできなかった部分については今後もさらに調査と分析を深めていきたい。
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