本研究の目的は、自己決定理論を理論的枠組みとして用い、L2リーディングにおけるモチベーションと読解力を高める教材・指導法の研究である。2018年度に実施した研究実績および成果について報告する。本年度は、2015年に開始した本研究の総まとめとして、以下に挙げる研究について発表および論文執筆を行った。1)Web-based authentic materialsの効果について:主にTED Talksをテーマ別に取り上げ、英語を「読む、聞く、話す」ための教材として活用した。学生のモチベーションの変化を量的に調べた結果、学生の興味のあるトピックを取り上げることにより、内発的モチベーションが高まったことが明らかになった。2)英語の歌を使った教材について:英語の歌の歌詞を「読む、聞く、話す」教材として活用した。全体的に学生のモチベーションは高まったが、特に、英語を苦手とする学生のモチベーションを高めるには効果的であることがわかった。3)授業にチョイスを取り入れる実践:自己決定理論に従って、自律性を高めるために、授業にチョイス(学生が自ら選ぶ活動・タスク)を取り入れた。学生によっては、自ら選ぶことに戸惑うものもいたが、学生によっては自ら選ぶことにより、その活動に対するEngagementが高まる傾向が示された。本研究の総まとめとしては、1)学生の興味・英語力にふさわしい教材を選ぶことにより、内発的モチベーションが高まり、2)英語力が低い学生については、Competenceを高める「理解可能な教材」を使用することにより、英語に対する苦手感が弱まり、3)指導法としては、学生に自己決定する機会を与えることが「達成感」や「やる気」につながる、などが明らかになった。
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