研究課題/領域番号 |
15K02696
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
池田 真 上智大学, 文学部, 教授 (10317498)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CLIL / translanguaging / 英語教育 / グローバル人材育成 / アクティブラーニング / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
当初の計画どおり、文献研究、学会参加、情報収集、フィールドワークにより、translanguaging(語学教育における母語と外国語の積極的活用)の概念、定義、機能、原理の構築を行った(具体的内容は下記参照)。それにより、translanguagingという抽象理念をCLIL教室で実践するための理論と方法が体系化され、具体化された。
1 概念:translanguagingに先行する用語としてcode-switchingがある。後者は話し言葉におけるより楽な言語への切り替えというやや否定的な響きがあるのに対し、前者は書き言葉も含め、第一言語と第二言語を資産と見なし、両者を積極的に活用することで意思疎通や学習の最大化を図るという肯定的な意味合いを持つ。 2 定義:CLIL(内容言語統合型学習)におけるtranslanguagingは、「教室における計画的かつ即応的な学習活動やコミュニケーションであり、学習者は自国語と外国語を積極的かつ目的を持って使用することで、教科独自の知識と学術的言語能力の学習を最大化するもの」と定義される。 3 機能:教室でのtranslanguagingには、(1)指導機能(時間節約、足場作り、理解促進、既存知識活用、学習法指導、言語力補強、二言語リトラシー発達、実生活スキル、学習評価)、(2)意思疎通機能(円滑なやり取り、教室運営、しつけ)、(3)メタ言語機能(言語説明、日英語対照、気づき、フォーカスオンフォーム)、(4)情意機能(ラポール構築、学習者アイデンティティ、学習スタイル対応、積極的参加)、(5)認知機能(深い思考、学習の振り返り、考察)の5つの機能が認められる。 4 原理:目的のある原理に基づく指導、計画的な学習活動、オーセンティックな言語使用、意味の重視、内容学習の手段、「第5のスキル」としての指導、二言語リトラシーの育成、など。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
この分野の研究発展は著しく、当初の研究計画書を提出した平成26年から実際に研究を開始した平成27年の間に、当該テーマに関する数多くの論文が発表された。そのため、自ら教室での授業観察によりデータを収集し分析せずとも、主に文献研究と学会参加により「研究実績の概要」に要約したような知見が得られた。その結果、次年度に予定していた、translanguagingを効果的に指導するための理論化→原理を分かりやすく説明するためのモデル化→教室実践に移すためのフレームワーク作り、による指導法開発はほぼ終わっており、最終段階であるtranslanguagingの効果を検証するための研究設計にすでに着手している。
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今後の研究の推進方策 |
translanguagingに関する有力文献には、「教科内容のより深い理解の促進」や「弱言語(主に外国語)のコミュニケーション力やリトラシーの育成」といった仮説が繰り返し登場する。次年度以降は、そのような仮説を検証するために、以下の3点を研究疑問として定め、そのための研究設計、研究ツール開発、データ収集と分析、結果の考察を進めていく。
1 translanguagingは、科目特有の語彙や概念を習得する助けとなるのか? 2 translanguagingは、外国語による言語産出の増加を促すのか? 3 translanguagingは、学習者の高次思考スキルを活性化するのか?
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次年度使用額が生じた理由 |
3月末に予定していた英国での文献調査が、イースター休暇に伴う大学図書館の長期閉館により行えず、その分の旅費を使用しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の未使用額を使い、予定していた文献調査を次年度に行う。
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