研究課題/領域番号 |
15K02717
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今尾 康裕 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (50609378)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 英語工学テキストコーパス / コーパス分析ツール |
研究実績の概要 |
研究初年度である27年度は、本研究の基となる英語で書かれた工学系基礎分野の大学教科書の電子化に向けたコーパス作成のための教科書の選定及び、コーパス作成及びテキスト分析のためのアプリケーションの開発・改良を行った。 当初は、本務校での教員によるアンケートなどを基にしてコーパスを作成する予定であったが、科研の意義からしても、ある程度の汎用性が必要ではないかということで、工学研究全般での基本的な用語及びそのコロケーション・用例などを幅広く集めるために、選定基準を一般的に工学系の大学教科書として多く用いられているものとした。その選定にあたっては、最終的に、オープンになっている大学のシラバスなどを収集して採用テキストなどのランキングを行っている The Open Syllabus Project での工学系テキストのランク上位のものを基にし、本務校のシラバスを分析した上で教科書及び参考書として登録されている英語教科書及びその翻訳書を考慮に入れて20冊ほどの教科書を選定した。ただ、他の作業などとも関係して、選定は年度末近くまでかかり科研費の執行が難しくなったため、予め別予算で用意していた教科書の電子化から取り掛かり、その購入及び電子化は次年度に持ち越すこととした。 電子化したコーパスの分析は、一般に無償公開している自作のアプリケーションを利用する予定で、その改善も予定に入れていたが、Mac OS のアップデートなどで問題が出る可能性もあったため、当初の予定では、コーパスの作成過程でその都度改良する予定であったが、改良というよりはほぼ書き直す形で、本研究でも利用する予定であった機能などを新たに加える開発を行い、これまでにあまり例のない機能を持つ高度なコーパス分析ツールとなった。アプリケーション自体は、その後も問題点の解消やマニュアルの作成も含めて、一般公開するに至った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初年度では、教科書コーパス作成及び、論文コーパス作成まで進める予定ではあったが、教科書コーパス収集の基準変更や、実績のところにも書いたように、分析のためのツールに注力する必要性があったことで、そちらを中心に進めたため、教科書コーパスの作成自体に遅れが出た。 また、この電子化は、大学院生を RA として雇用して進める予定であったが、リスト作成の遅れや予定していた大学院生の都合などにより、まずは、テキストの電子化から、新たに改良したアプリケーションの操作などに慣れてもらいながら進めているため、進みが遅くなっている。コーパスに含める教科書の選定も終わり、新年度になり新たな大学院生も増えたことから、現在作業を担当している大学院生を中心に RA を増やして、電子化作業の遅れを取り戻したいと考えている。 ただ、アプリケーションの開発・修正で予定していた大きなものは、すでに組み込んだため、今後はアプリケーションの修正は細かなものが中心となるため、そのために予定していた時間は、テキストの電子化や論文電子テキストの収集に充てる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、ようやく開始することができた教科書コーパス作成に加えて、学術論文を収集しての論文コーパスの作成にも手をつけ、ある程度の規模のコーパスを作成する。その過程で、昨年度大きく改良したアプリケーションを利用して、必要な改良を加えながらコーパス作成と同時に分析も行い、標識付けなどの基準を決めていく。この基準で RA に作業を任すことができれば、出来上がったデータを利用するためのシステムの構築にも手をつける。当初は、標識付けの途中でアプリケーションの改良を行う予定であったが、その部分は前倒しで行う形となり、その分の負担は減るため、コーパスの作成及び標識付けに注力できると考える。 課題としては、RA の確保及びその訓練で、そこがうまくいけば、予定よりも遅れている現状を取り戻せるが、留学を考えている者もいるため、不確定要素が多少あることが心配ではある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画とは異なり、コーパス作成のためのデータ用の工学系教科書及びコーパス関連書籍の購入のための予算をほとんど執行せず、28年度に回したため、物品費の使用金額が少なく、次年度にその予算を執行予定のため。また、それに伴い大学院生雇用開始も遅くなったため、人件費の費用も少なくなっている。
|
次年度使用額の使用計画 |
28年度は、コーパス作成・分析を中心として行う予定であるため、そのデータとなる書籍の購入や、研究のためのコーパス関連書籍の購入。また、コーパス作成のための大学院生雇用に昨年度予定していた分も含めて使用する予定である。
|