研究課題/領域番号 |
15K02728
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
今井 康博 上智大学, 言語教育研究センター, 准教授 (10516149)
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研究分担者 |
河村 一樹 東京国際大学, 商学部, 教授 (20224850)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 反転授業 / ルーブリック / アカデミックスキル / 教育評価 / e-learning / LMS / 内容言語統一学習(CLIL) / ポジティブ心理学 |
研究実績の概要 |
本研究は二つの大学(東京国際大学・上智大学)の研究室による共同研究であり、協同学習型の反転授業を導入した授業モデルの中で、知育・徳育両面を含む広い意味での学習効果の測定方法開発を目的とする。
東京国際大学分担分では、ノートテイキング、情報検索スキル、プレゼンテーション等のアカデミックスキル習得のための初年次教育に焦点を当て、習得状況評価のためのルーブリックの電子化及び利用について実証実験を行った。e-Learningシステムに実装した反転授業用教材による事前予習を義務付ける一方、教室では個人またはグループ単位で演習を行った。教員、学生が各々ルーブリックに基づく学習評価を行い、両者に殆ど差がないことが確認された。これにより,スキル習得におけるパフォーマンス評価では,臨場感のある場面において即時判定する仕組みを提供することが有用といえる。実証実験の結果については、日本教育工学会およびe-Learning教育学会で講演発表を行った。
上智大学分担分では、ポジティブ心理学をテーマとする内容言語統一学習(CLIL)を用いた英語講座で反転授業を導入、関連知識の習得、総合的英語力の向上、さらに身体的、心理的及び社会的満足感(Quality of Life/QoL)との関わりを探る手法を模索した。ただし、平成27年度は同講座履修者が極端に少なかったため、本来の観察対象外の英語講座二つを利用し、内容理解度、反転授業に対する態度、およびQoLに関するアンケート調査を行い比較をした。期間中研究協力者の健康問題によりサポートが滞る想定外の事態が発生、年間を通じてごく小規模の反転授業実践にとどまり、総じて同年度はパイロットスタディ的色彩を濃くしたが、大学における反転授業の円滑な運営に欠かせない要素、授業の徳育的側面をQoL以外により適切に示す指標導入の必要性等、将来研究に向けての知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東京国際大学分担分においては、平成27年度については反転授業の評価モデルを主に手書きとオフラインで運用した。ルーブリックによるデータも取得できたのでほぼ順調といえる。
上智大学分担分においては、平成27年度については複数の要因により当初予定していた頻度の反転授業を行うことができず、十分なデータを収集することができなかった。また焦点を当てている「徳育」の部分でルーブリックや評価モデルを導入することについて、理論的枠組みやデータ収集手法についてもさらなる検討を加える必要があることから、やや遅れていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
東京国際大学分担分について、平成28年度は同じ演習科目で再度実証実験を行うことを計画している。ただし、スキル評価については簡易版ではなく、本格的なルーブリックをオンライン(Moodle)利用の形で導入したい。これにより学生に対する評価結果のフィードバックを時宜を捉えて行うことが可能になり、より高い学習効果に繋がるとも期待できる。
上智大学担当分については、平成28年度春学期は、反転授業実践の頻度を高くするとともに確実にデータを収集できる体制を再構築する。反転授業用教材については、確実にサポートを依頼できる教育ベンダーと契約するとともに、Moodle上での知識習得チェックを行っていく。引き続き「ポジティブ心理学」の講座及び他の担当英語コースを対象としつつ、「徳育」の点に関してはQoL以外の新たな指標を導入したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
東京国際大学分担予算分については,前年度の科研費の使用額はほぼ当初の申請通りであった。
上智大学分担分については、反転授業の実証実験にあたり、動画教材作成サポートを依頼していた研究協力者が健康を害したため計画が予定通りに進まず、この結果動画コンテンツ制作及び授業支援に対して支払う予定で計上した経費が支払えず、翌年度に繰り越さざるを得なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
上智大学分担分について、新たに動画コンテンツ作成及びサポートを依頼する業者(株式会社デジタル・ナレッジ)を選定、必要経費に充当していく。
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