研究課題/領域番号 |
15K02744
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
野呂 徳治 弘前大学, 教育学部, 教授 (90344580)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | WTC / 外国語学習不安 / 力学系理論 / アトラクター / 第二言語習得 |
研究実績の概要 |
本研究は,第二言語(外国語)を用いて自発的にコミュニケーションを行おうとする意志(L2WTC)と外国語学習不安が,どのような相互作用のもとでどのように生起・変動し,それが学習者の言語使用にどのような影響を与えるのかについて,特に,力学系理論(DST)をその理論的基盤として明らかにすることを目的とするものである。 研究2年目となる平成28年度は,L2WTCと外国語学習不安の相互作用を,DSTにおいて自己組織化のプロセスにおける安定状態であるとされるアトラクター(attractor)としてとらえ,その構成概念モデルを構築することを目標とした。モデル構築にあたり, DSTにおいて定式化されている事象及び説明変数が,特に社会科学における非数学的(nonmathematical)DSTアプローチでどのように応用されているのかについて精査した。その上で,これまでに蓄積した英語圏への留学経験のある日本人英語学習者(大学生)に対する質問紙調査並びにインタビューデータを再吟味し,L2WTC-外国語学習不安アトラクターモデルを構築した。さらに,米国における3週間のホームステイによる語学研修プログラムに参加した学生を対象として,自然発生的会話場面での発話録音を基に刺激再生法(stimulated recall method)によるインタビューを実施し,そのデータ分析を通して仮説モデルの妥当性検証及び精緻化を試みた。 その結果,L2WTC-外国語学習不安アトラクターは,L2WTCと外国語学習不安のそれぞれの強度が,両者の生起・変動の先行条件及び規定媒介要因により増幅・減衰することで,揺らぎ(perturbation)が生じ,それにより安定状態の変質であるアトラクターの相転移(phase transition)が引き起こされ,コミュニケーション参与及びパフォーマンスに影響を与える可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初年度の平成27年度に実施予定であった英語圏に長期留学を経験した大学生を対象としたインタビューが,十分な数の調査対象者を集めることができず,実施できなかったため,その代替として,2年目となる平成28年度末に,短期語学研修参加者を対象に質問紙調査及びインタビューを実施したが,依然,長期留学経験者へのインタビューは未実施となっているため,L2WTC及び外国語学習不安の生起・変動と両者の相互作用を説明するためのモデル構築の作業全体に遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度及び2年目において遅れが出ているL2WTC及び外国語学習不安の生起・変動と両者の相互作用を説明するためのモデル構築については,研究3年目となる平成29年度には,英語圏での長期留学経験者へのインタビューも含め,実証データの収集・分析を進め,すでに構築してあるL2WTC及び外国語学習不安の相互作用に関する仮説構成概念モデルの吟味・精緻化を急ぎ,研究全体の遅れを取り戻したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に予定していたインタビュー調査が十分な数の調査対象者を集めることができず,実施できなかったため,当該年度の所要額の一部を次年度使用額として繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度の次年度繰り越し分については,当該年度において実施できなかったインタビュー調査のために使用する予定である。
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