研究実績の概要 |
近年、グローバル人材育成のため、日本人学生の英語力向上を目指す大学が多い。その方策の一つとして、大学は英語開講科目を作ったり、英語会話が練習できる学習支援室を設置したり、さまざまな英語使用環境を用意している。また、大学が用意した英語使用環境の他に、友人同士のおしゃべりなど、日本人学生が留学生を相手に、英語で話す機会もあると思われる。しかし、日本の大学における日本人学生の英語によるコミュニケーションの実態はまだ明らかではない。そこで、本研究では、大学での日本人学生の英語によるコミュニケーションの実態を明らかにするために、さまざまな場面での実際の会話を録音・録画し、会話分析・談話分析を行う。その目的達成のために、下記の通り、三つの調査を行った。 〈調査I〉は、英語学習支援室内での会話の分析である。Krug (2019a; 2019b)では、教室内での会話に比べ、英語学習支援室での会話では、学習者はより広範にわたって相互行為参加のためのストラテジーを用いていることがわかった。 〈調査II〉は、授業内外での英語学習場面の相互行為の分析である。Krug(2008)では、日本人英語学習者同士で話し合いをさせる際に、教員がどのような学習のステップを用意するかが話し合いの成否に大きく関わることを明らかにした。また、Otsu & Krug (2019)では、グループリーダーの行動がいかに話し合いの様相を変えていくかを記述した。 〈調査Ⅲ〉では、友人同士の雑談の中で学習がどのように行なわれるのかという観点から分析を行った。知らない語のスペルを聞く、それを繰り返すという活動によって再度その語が出たときにも適切な文を作ることに成功するということ、一度は誤解を生んだ表現を会話の中で互いに修正することがその語の正しい使用に結びつくということがわかった(Krug, 2019; Krug, 印刷中)
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