研究課題/領域番号 |
15K02751
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
田中 順子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (90335406)
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研究分担者 |
村尾 元 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (70273761)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 第二言語習得論 / 英語冠詞 / 熟達度 / 事象関連電位 / 視線追尾 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、第二言語(L2)としての英語学習者の認知活動を情報処理アプローチを用いて検討することにより、学習者の英語熟達度(英語習熟度)によって、英語形態統語(特に冠詞)の処理プロセスがどのように異なるのかについて経時的変化を検討することである。L2の形態統語の知識は当該言語能力の到達レベルを測る指標として使われている。英語の形態統語処理について、学習者の行動速度と主観測度の間には「ずれ」が散見されるが、そのずれ方は学習者の熟達度によって異なることが示唆される。行動測度や主観測度に加えて、視線追尾と事象関連電位の測定を行い、英語形態統語が統語的/意味的に処理されるのか、意識的/無意識的に処理されるのかを検討する。 平成28年度は主として次の4点についての研究を行った。(1) Web Article Testを視線追尾分析ソフトウェアの実験遂行モジュールに移植し、視線追尾ソフトウェアを使って録画した動画をバッチ処理する方法を検討した。(2) 英語冠詞処理をする際の視線の所在に基づいて、計量的に分析する方法を検討した。(3)L2課題処理中(タスク条件下)のデータ収集を、様々なL2英語熟達度の参加者を得て行い、行動測度、主観測度、視線の動きを計測して分析し、L2英語熟達度と英語冠詞処理との関係について検討した。(4) L2課題処理中(タスク条件下)のデータ収集を英語母語話者の参加者を得て行い、L2英語学習者と英語母語話者間の英語冠詞処理の相違点について検討した。(1)から(3)で得られた結果を、本報告書に記載の学会や雑誌で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以下の二つの理由によって若干研究が遅れていると言える。(1)反応時間をより正確に計測するために、実験環境をWebベースからPCベースに移植したためである。これにより、視線追尾分析ソフト内の実験遂行モジュール中に刺激を直接呼び出して、より正確に反応時間を計測できるようになるのだが、このために当初の予定よりも環境整備に時間がかかった。(2)3月に予定していた事象関連電位測定装置を使った実験の開始が、不測の事態により遅れたためである。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、より多くのL2英語話者や英語母語話者の参加を得て、タスク条件下におけるデータ収集を行い、L2熟達度別にその影響の分析を行う。引き続き、行動測度、主観測度、脳波や視線の動きといった測度を用いて、L2形態統語処理におけるL2熟達度の影響について情報処理アプローチを用いて検討する。最後に3年間の研究の総括を行い、研究成果を国際学会やジャーナル等で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
脳波のデータをPCで得たデータと同期するために必要な機器を、米国のメーカーから直接購入する予定であったが、日本の代理店を介さないと購入できないように営業方針が変更されていた。そのことが判明するまでに時間がかかったために、同機器の購入が平成29年度にずれ込むことになった。また、平成28年度末に米国内の国際学会に参加予定であったのだが、インフルエンザに罹患したために参加出来なくなったことから、その旅行費用を次年度に繰り越す事になった。これらの理由により次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、データを同期するために必要な上記の機器の購入と、平成29年度の研究発表の旅費等に使用する計画である。
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