研究課題
本研究の目的は、移動表現における第二言語としての英語・日本語学習者の学習言語の特徴を明らかにすることであり、そのため産出実験を利用した分析を行うものである。移動表現は、様々な表現の基本となる表現であるにも関わらず、誤用も多く習得困難であるため、その学習者言語の特徴を明らかにすることで、現状の言語教育の問題点を明らかにし、移動表現をどのように教えるかについても示唆が得られるものと確信している。平成29年度は最終年度として、以下のような取り組みを行った。①実験データの分析:平成28年度に収集した英語母語話者・日本語母語話者・日本語母語英語学習者・英語母語日本語学習者のデータを分析し、母語話者と学習者の表現傾向を比較した。②成果発表:国際学会で4件、国内学会1件で発表を行い、研究成果の一部を論文として三本発表した。データの分析から分かった学習者の言語化傾向は、次の二点である。①学習者は母語話者に比べ、移動事象に含まれるすべての意味概念に言及する割合が低い。②特に複数の経路から成る複雑経路を含む移動事象では省略が起こりやすく、その場合着点が優先される。日本語母語英語学習者では、さらに時間的な並びに反して、着点が最初に置かれることが多いという傾向が見られた。③ダイクシスの表出頻度や動詞で表す意味概念などにおいて母語の影響が観察された。今後、研究成果全体のまとめを、平成30年6月に開催される関西言語学会で、ワークショップを行い(採択済み)、発表することと、本研究課題の研究成果を含めた移動表現に関する第二言語習得研究の成果を原稿としてまとめ、出版する準備を進めている。
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鳴門教育大学研究紀要
巻: 33 ページ: 295-308
ヨーロッパ日本語教育 報告・発表論文集
巻: 21 ページ: 249-254
西原哲雄・田中真一・早瀬尚子・小野隆啓(編)『現代言語理論の最前線』
巻: 1 ページ: 216-230