研究実績の概要 |
本研究の目的は、第二言語学習者の言語処理プロセスを明らかにすることにある。特に、日本人英語学習者がどのように第二言語の音節を知覚し、単語分節を行うかを調査した。単語分節方略は言語特有であり、母語の音節構造が影響を与えていると報告されていることから、母語の音韻配列の生起制限が第二言語処理に影響を与えると予測した。母語と音節構造の異なる第二言語を聞き取るとき、何を単位として聞き取っているのか、また第二言語習熟度によって単語分節方略は変化するのかを検証するため、ABX課題および探知課題を行った。ABX課題では、日本語では許されていない音素配列(VCCV;e.g., egbu)と日本語に存在する音素配列(VCVCV; e.g., egubu)の違いを認識できるかどうかを日本人上級英語学習者18名と初級学習者20名、および英語母語話者18名に行った。探知課題では、刺激音声の持続時間を加工するわりに、モーラの音節配列を変数に用いて実験を行った。2種類の目標音韻配列(CVC/CV)を含む2音節の無意味語を目標単語として(例:目標音韻配列bay/base、目標単語basetove)、日本語の音素配列(CV)で分節しているのかどうかを調査した。 本研究は、日本人母語話者のモーラ単位による言語処理仮説を検証するとともに、異なった英語習熟度の第二言語学習者の音声知覚を音節レベルで調査することで、音節の知覚発達を検証した。こればでの第二言語による音声知覚発達モデルは、音韻レベルのものが主であったため、本研究結果は、第二言語習得研究および言語処理モデルに新たな知見を加えることができると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度は、国際学会(ICPhS, Interspeech)に参加し、研究者との情報交換を行い、エジンバラ大学に研究員として1カ月滞在した。エジンバラ滞在中、当該大学研究者との研究打ち合わせ、実験音声の録音、および実験プログラムの作成、英語母語話者のデータ収集を行った。国内では、日本人英語上級者の被験者データ収集のため、東京、および札幌の大学を訪れた。28年度は、本研究結果が2つ国際学会の査読を通り、ポスター発表を行った。まず、ABX課題の結果はNew Sounds(Aarhus, Denmark: 2016年6月12日)で、探知課題の結果はInterspeech (San Francisco, US: 2016年9月9日)で発表を行った。また、後者の研究結果は、Interspeechの予稿集でも発表されている。
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