研究実績の概要 |
本年度、研究代表者は、日本と中国の映画・テレビドラマを素材として、日中の感情表現の分析を行い、その成果を「感動詞ワークショップ」 で口頭発表を行った。また、分担者は、学習者の物語文におけるトピック管理や、学習者の第一言語(中国語)と第二言語(日本語)による指示表現の比較について、口頭発表 を行った。以下ではこれらの研究の概要を報告する。 日中の感情表現の分析は、前年度行った感情表現として用いられる感動詞の分析を深めた。前年度は、意味機能が類似する中国語の3つの感動詞の生起する場面の特徴を分析し、さらに中国語とその日本語訳出と対照して、日中間の共通点と相違点を考察した。今年度は、日本語の映画及びその吹き替え版を対象に、日中で用いられる感動詞の対応関係を分析し、日本語及び中国語における感情表出の感動詞の形式と機能の整理を行った。 分析の結果、日本語では、「あー」、「えー」、「へー」という3つの感動詞が多く用いられ、これら3つの感動詞は、中国語では、a, ai, aiya, aiyo, wa, wao, ngなどで訳されている。「あー」、「えー」「へー」は、生起する文脈により、賛嘆/感心などポジティブな感情表出と、不満/落胆といったネガティブな感情表現のいずれにも用いられるが、吹き替え版で用いられる中国語の感動詞と日本語の対応関係を分析した結果、一定の対応関係が明らか になった。 また、言語類型論の観点から、中国人学習者の第一言語と第二言語による指示表現の比較をした結果、複数の登場者が同じ場面にいる場合のように、情報の提示の仕方そのものが難しい箇所に、学習者の第一言語の談話パターンが第二言語使用場面に転移する可能性が見られた。
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