本研究は、近年発展しつつある第二言語教師教育研究における教師認知研究の動向を踏まえ、(1)英語科教員養成段階にある学生は、文法指導に関してどのような信念に基づいて授業計画を作成するのか、また、(2)その信念の形成に過去の学習者としての経験、教育実習、講義経験はどのような影響を与えているか、さらに、(3)講義や教育実習を通じて文法指導に関する信念がどのように変容するかを、質的研究方法により明らかにすることを目的とする。
平成30年度においては、27、28年度に、(1)前期に英語科教育関連科目の第1、2回授業において、具体的に中学校の検定教科書の新出文法を含む頁を提示して作成させた授業計画、文法指導に関するどのような信念に基づいて作成したかを回答させた質問紙、その結果および作成した授業計画を手がかりにしながら行ったインタビュー、(2)教育実習中の授業の観察、その後の質問紙への回答、インタビュー、(3)実習終了後、講義の最終回において作成した授業計画、質問紙への回答、インタビュー、(4)毎講義の終了時に記入した振り返りシート、の分析が主な実績である。具体的には質問紙の分析、主としてインタビュー、振り返りシートにより収集されたデータの29年度から継続した分析である。分析により主に以下の結果が示された。(1)信念および関連要因は相互に複雑に影響している。また、個人差が見られる。(2)調査期間を通じて信念に変容が見られた。(3)指導手順について、PPPからFocus on Formの考えた方に基づくタスクを中心とした指導を志向するようになった。(4)後期の講義が、信念および実践の省察を促し、具体的な知識を得る機会となっている。(5)教育実習経験の授業計画への影響も強く見られる。(6)具体的なイメージが伴わない信念や教育実習の影響により信念と授業計画等が必ずしも一致しない部分が見られる。
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