研究課題/領域番号 |
15K02785
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
酒井 英樹 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (00334699)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 教育評価・測定 / パフォーマンス評価 / CEFR / Can-Do リスト |
研究実績の概要 |
平成27年度は、パフォーマンス評価に関する研究を理論的に整理した。理論的研究として、(1)ヨーロッパにおいて複数言語主義に基づいて提案されたヨーロッパ言語共通参照枠 (CEFR)に基づくCan-Doリストを用いた評価、(2) タスクに基づく第二言語教授法においてタスクの完遂によって学習者のパフォーマンスを評価するタスク利用型の言語評価、(3) 社会文化論的な立場から評価を行うダイナミックアセスメントを取り上げた。学術論文及び図書を入手し、研究結果を概観し、3つの評価法の比較・対照を行った。また、平成27年8月から平成28年3月まで東京外国語大学において内地研究を行った。この期間、外国語教育における評価に関する専門家の指導・助言のもと、パフォーマンス評価について理論的研究を進めた。さらに、外国語教育に関する学会(中部地区英語教育学会、小学校英語教育学会、全国英語教育学会)において評価に関する研究発表を参加し、情報を収集した。3つの評価法の共通点として、英語コミュニケーション能力を知識ではなく技能として捉える考え方に基づいており、評価方法はパフォーマンス評価法である点で共通していることが指摘できる。一方で、CEFRに基づくCan-Doリストを用いた評価は言語能力に焦点を当てており、タスク利用型の言語評価は状況に応じた言語使用やコミュニケーションの目的を考慮しており、ダイナミックアセスメントはコミュニケーションのプロセスに注目しているというように、3つの評価は、焦点を当てるパフォーマンスの側面に違いがあることを整理した。この成果は、「外国語教育における評価に関する3つの立場 ―CEFRに基づく評価、タスク利用型の言語評価、ダイナミック・アセスメント―」としてまとめられ、中部地区英語教育学会・三重大会(平成28年度6月)において発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の計画は、3つの評価法の相違点・類似点を明らかにすることであり、この理論的研究は順調に進んでいると考える。一方で、平成27年度の計画においては平成28年度に実施する予定の中学生を対象にした実証研究の計画に着手する予定であったが、平成27年度内には実施できなかった。そのため、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成28度の実施計画は、中学生を対象にした実証研究を実施し、結果を考察することと、平成27年度に実施した理論的研究の成果を学会発表することである。 第1に、実証研究の計画については、平成27年度に着手する予定であったが、実施できなかったため、平成28年度内の実施計画に含めて行う。実証研究は、中学生を対象にした実験授業である。対象は、中学2年生5クラス程度(約150名 30名×5クラス)である。中学2年生に対して、ある単元を実施し、評価に関するデータを収集する。評価に関するデータとして、(1) ダイナミックアセスメント(協力者の教員による評価)、(2) Can-Do リストを用いた評価(研究者及び協力者の教員による評価)、(3) タスク利用の言語評価(協力者の教員による評価)を得る。また、その他のデータとして、(1) 授業の観察記録(研究者による観察及び記録)、(2) 生徒による自己評価(アンケート調査)、(3) 生徒及び教員に対するインタビュー調査のプロトコルを収集する予定である。評価に関するデータについては、量的に分析する(相関分析、確証的因子分析)。その他のデータの授業記録とインタビュー調査については、質的に分析する(談話分析、内容分析)。自己評価の結果は、評価に関するデータと共に量的に分析する。 第2に、平成27年度の成果を、「外国語教育における評価に関する3つの立場 ―CEFRに基づく評価、タスク利用型の言語評価、ダイナミック・アセスメント―」としてまとめられ、中部地区英語教育学会・三重大会(平成28年度6月)において発表する。
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