研究実績の概要 |
研究計画最終年度の本年度は,昨年度、学会誌に投稿した論文2本の修正と再投稿、および研究全体の総括を行った。 日本人大学生199名が受験したTOEICリスニングのデータを用いて、能力別に錯乱肢の魅力度を検証した。3択の応答問題においては、錯乱肢のもっともらしさを構成する要因として「同語」「派生語」「音声的類似」「語彙的連想」「応答キーワード」を設定し、重回帰分析を行った。上位群・中位群とも錯乱肢の魅力度を構成する有意な要因は見出せなかったが、下位群においては「応答キーワード」と「語彙的連想」の2つの要因から成るモデルが錯乱肢の魅力度の予測に有意であった。この研究成果は九州英語教育学会紀要に投稿し、採択された(飯村英樹、2018)。 4択の会話文および説明文問題では、錯乱肢のもっともらしさを構成する要因として「同語」「類義語」「派生語」「否定語」「限定詞」を設定し、重回帰分析を行った。上位群では「同語」と「派生語」の2つの要因、中位群では「同語」のみ、下位群においては「同語」「限定詞」「派生語」の3つから成るモデルが錯乱肢の魅力度の予測に有意であった。「同語」と「派生語」に関しては、本文と同じ語句(同語)や派生語が含まれていると、錯乱肢の魅力度が高くなるという結果であるが、限定詞に関しては逆にallやonly, veryなどが含まれると錯乱肢の魅力度が低くなるという結果になった。これは限定詞を含んだ選択肢は誤りであるというテストテイキング・ストラテジーの1つであるinformed guessing(知識に基づく当て推量)が働いたためであると考えられる。この研究成果は日本言語テスト学会誌に投稿し採択された(Iimura, 2018)。
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