2018年度に行ったことは、自由記述の質問紙から得られた情報を質的に分析し、何が学習者の会話する意欲やその先行要因になる理想の自己・内発的動機づけと関連があるかを検証した。結果として、「英語」という単語が自由記述に最も多く見られ、その使用は「英語に触れる機会が多かった」、「英語のスキル向上につながった」などポジティブに使われている傾向を多く見せていた。このような記述は英語の授業を英語で行った環境下の学生によって多く提示されていた。2016年度、2017年度の量的研究の結果では、英語を英語で教授することが必ずしも学習者の会話意欲や動機づけの向上に強く影響を与えなかったが、自由記述の分析では、英語を英語で学んだ学習者の方が理想的な記述をしていたことが判明した。しかしながら、学習者の理想の自己に関する記述は皆無であった点から、その要因を刺激するためには英語を英語で教授することだけでなく、より特定的な活動や教育的介入が必要である。これらの内容を2018年度には論文にまとめ、さらに中部地区英語教育学会、全国英語教育学会、アジアTEFLなどの学会で発表を行った。 英語は原則英語で教授するべきか、という課題に動機づけと会話意欲に着目して行った研究であったが、全体を通して以下のような提案ができる。①英語母語話者の教員や日本人教員がほぼ100%に近い割合で英語で教授しても、日本語をより頻繁に使用した環境と大きな差は見られなかった。②しかし、英語で行う授業に関しては動機が低下する、不安が高まる、といったネガティブな結果が見られなかったので、学習成果を考慮すると推奨されるべきである。③比較的熟達度の高い学習者は、より英語母語話者の教員が教授すると会話意欲が高まる傾向にあった。まだこの種の研究は多くされていないので、今後も研究していく必要性があるだろう。
|