本研究の目的は下記の通りであった。看護学部の学生が医療英語特有の難解な語彙を習得する際に必要となる、正書法処理力(特定の文字が単語内で出現する位置についての特徴、文字の並びについての規則性や頻度を抽出し、これらの知識に基づいて単語を処理する能力)と音韻認知力(書かれた単語を音素と書記素の対応 規則によって音声化しながら単語を処理する能力)を正確かつ継続的に測定(形成的評価)するために、医療英語の語彙に焦点化したテスト項目を多数の備えた項目バンク(平井 2010)を構築する。テスト項目には難易度を付与し医療の分野毎に分類・整理することで形成的評価の実施を円滑にする。また研究結果を反映させた問題を使用した補助教材を作成する。本年度の研究実施計画は研究成果をまとめて国内外の学会および学会誌において成果を発表することであった。 最終年度ある今年度は国際学会にて3回の発表および看護系学会誌へ1本の論文発表を行った。具体的には、マカオ、ベトナム、イギリスにおける各学会発表では、英語の文字と音の不規則性や項目応答理論を用いてテスト項目の妥当性検証について活発な質疑が行われ、正書法処理能力および音韻処理能力を正確に測定するテスト項目を備えた項目バンクの構築が日本に限らず英語非母語話者の読解における共通の課題であることを再認識する機会となった。今後は正書法および音韻処理能力を向上させるための教材開発や教授法の精査が必要であることも再確認した。また看護系学会誌に発表した論文においては、医療系語彙について正書法および音韻処理能力を測定するテスト項目を作成および妥当性検証を行う手順及び結果について報告した。医療系語彙のテスト項目の作成においては基礎レベル以上のテスト項目の開発が必要であるということも考察した。
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