研究課題/領域番号 |
15K02802
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
石原 紀子 法政大学, 経営学部, 教授 (90523126)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 教員養成 / 語用論的指導 / 教員のプロフェッショナル・ディベロップメント / 多文化理解 / 異文化間コミュニケーション / プラグマティックス指導 / 小学校の英語教員の養成 / ライフ・ヒストリー・インタビュー |
研究実績の概要 |
本年度は、第一に米国政府研究機関であるCARLAで中間言語語用論や異文化間語用論の領域の様々な研究から教室指導に役立つ情報を抽出して語学教員に利用しやすくしたデータベースの更新作業を立ち上げた。サイトを管理するミネソタ大学(CARLA)と連携し、新しい研究成果が反映されるべき項目を挙げ、更新にあたって取るべき手段を確認した。また、語用論的指導について知識と経験のあるリサーチ・アシスタントを雇用し、新たな項目の一つを完成させた。 第二に、応募者が共著で出版した書籍Teaching and learning pragmaticsに新たな内容を増補した改訂版を出版することも本研究の目標の一つであるが、2015年秋、イギリスの出版社 (Routledge) から英語版の改訂を依頼されたので、この書籍を実際に使った研究者4名のコメントを参考にした改定内容に関するプロポーザルを書き、出版社と交渉して12月に改訂の契約を結んだ。今回はより詳しくより幅広い読者を想定した増補改訂をめざしている。2015年1月より原稿に加筆を始めた。 次に、イタリア文部科学省の教員養成プログラムについて事例研究を行い語学教員の学びを検証し、日本における小学校の英語教員の養成への応用の可能性を探る計画も着手した。イタリアでの教員養成に関する資料で英語や日本語で書かれている文献が少ないことから、研究協力者であったRichieri 博士と共著で論文を執筆することにした。 その他、アメリカの語学教員及び日本の英語教員の多文化体験と語学文化教育および語用論的指導との関連についてより深く検証すべく新たなデータ収集も開始した。教員の多文化体験を聞くライフ・ヒストーリー・インタビューを通して、多文化体験や語用論的ことばの使い方についての理解を深め、教員研修への示唆を考える計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イタリア文部科学省の教員養成プログラム (Punto Edu Lingue) の事例研究では、研究協力者でこのプログラムの指導者の一人であったCristina Richieri 博士が2015年に退職され新しいデータ収集が困難となった。当初は2016年度春学期終了時まで約8カ月のデータを取り分析を進める予定であったが、2015年秋に計画を調整し、まずはこれまで収集したデータをもとに論文を共著で執筆することにした。Richieri 博士の予定に従い、2016年6月までにこの草稿を仕上げ、大学英語教育学会(JACET)の機関紙に投稿する見込みである。その他の研究は、2015年秋から在外研究機関に入っていることも幸いしてほぼ当初の計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
先に述べたデータベースの更新に関しては、リサーチ・アシスタントが2016年3月で辞退したため、在外研究先のカリフォルニア大学デイビス校で語用論に関する研究を行っている博士課程後期の学生の中から、急きょ新たなアシスタント(Kim Morris 氏)を雇用した。この計画は2019年度までの長期計画であるが、アシスタントと実際に会って話し合いながら仕事を進められるのは大きな利点であるため、今後できる限り多くの項目をまとめてミネソタ大学の援助を得て著作権の許可を獲得し、データベースの更新を宣伝するところまでこぎつけたい。 また上に述べた著書の改訂・増補は比較的大規模で、分野への影響もあると考えれるので、それなりの時間をかけて最新の文献を読み、それを語学教員にもわかりやすい言語で表現することが必要である。2017年夏までに第一草稿を仕上げ、そこから約1年かけて第一草稿にさらに加筆するのが目標である。さらに、たとえば Camilla Vasquez博士、Heidi Vellenga博士、Zoreh Eslami博士、田口直子博士など、米国内で活躍する研究者のそれぞれの章の専門分野に沿ったフィードバックを事前に得て原稿を改善することも目標としている。 新たなデータ収集(ライフ・ヒストリー・インタビュー)に関しては、前述した共同研究者のJulia Menard-Warwick博士と2016年度に対面で相談しながら進めていく予定である。ライフ・ストーリー・インタビューを用いた質的研究は初めてであるため、博士のデータ収集法・分析法・論文の執筆段階など、すべてを参考にさせていただきながら進めたい。これは自らの研究手法を拡げる機会でもある一方、日本では応用言語学の分野でこのような質的研究が少ないので、さらなるデータ収集・分析・論文執筆へとつなげられればと期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
例年参加しているアメリカ応用言語学会が、大抵は3月に開催されるので、予算を本年度に盛り込んでいたが、今年は例外的に4月に開催されたため、多少の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
4月に開催されるアメリカ応用言語学会とTESOL学会に出席し、学会出張費やそれらの学会で購入する図書費として使用したい。
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