本研究は次の (1)~(3)を研究目的とした。(1) 多読プログラムの学習者のプレイスメント並びに読みの発達の測定に使われているEdinburgh Project on Extensive Reading (EPER)クローズテストの妥当性を検証する。(2) 多読を継続することによる読みの流暢さの時系列的変化を分析する。更に、多読開始時の英語力、読書量と読みの流暢さの発達はどのような関係にあるのか。(3) 読みの流暢さが発達した学習者には量だけが影響を与えているのであろうか。研究代表者に加えて、高瀬敦子氏、大槻きょう子氏が研究協力者として全般的に研究に加わった。 上記 (2) の研究目的に関して、一年間多読を行った多読グループと多読が取り入れられていないリーデイングクラスを統制群とし、英語力、英文読解力、読む速度についてデータ分析を行った。読む速度に関して、多読グループは一年を通して順調に読む速度を伸ばした。統制群もほぼ同様のパターンが見られた。両グループを比較すると、開始時では多読グループは統制群よりも読む速度が遅かったが、終了時には前者の読む速度は後者よりも速かった。更に、EPER読解力テスト結果を分析し、両グループの読解力の発達の違いを検証した。分析の結果、多読グループでは開始時と終了時では読解能力に有意差が見られたが、統制群では有意差はみられなかった。更に、両グループを比較すると、開始時には両グループの読解能力に有意差はなかったが、終了時には有意差が見られた。以上のことから、多読を一年間継続した学習者は統制群よりも読む速度と読解力をより一層発達させたと言える。上記(3)に関しては、読書量だけではなく、多読の進め方、学習者が読了した各多読本の内容との関わり方の程度も影響するという傾向が見られた。 今後、研究期間中収集したデータの分析を終え、順次国内外で研究発表を行う。
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