研究課題/領域番号 |
15K02811
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
鈴木 智己 旭川工業高等専門学校, 一般人文科, 教授 (70342441)
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研究分担者 |
沢谷 佑輔 旭川工業高等専門学校, 一般人文科, 准教授 (10733438)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 動機づけ / ライティング / 評価・測定 / cohesion / coherence |
研究実績の概要 |
H27年度は当初の予定通り,本調査で用いる質問紙(3種類)を作成し,予備調査を行うことで質問項目の確定を行った。また,本研究着手前のH26年度には既に,本実験で研究協力者に対して行う指導と同様に「結束性(cohesion)」と「一貫性(coherence)」に焦点を当てた指導を部分的に実践していたが,その後に得られたライティング・プロダクト(以降:プロダクト)を分析し,評価との関係性の検討を行った。これにより,本調査でどのような指標を用いてプロダクトの分析を行うべきであるかが明らかになった。また,課題で扱うトピックやライティングの種類(expository, persuasive, descriptive, narrative)によって用いられる「結束的要素 (cohesive devices)」の数が異なってくる可能性が明らかになったため,本調査のプリ・テストおよびポスト・テストで用いる課題の設定に留意が必要であることがわかった。具体的には2回のテストで用いるライティングの種類を説明文とし,そのトピックも文章構成パターン(pattern of organization)の差による影響を避けるため,ほぼ同質のものにすることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究協力者の英語学習に対する動機づけを測定する質問紙を作成するため予備調査を行った。鈴木(2014)の研究で用いた項目を中心とした34の質問項目を用いて因子分析を行い,抽出した因子を構成する項目を残し,新たな項目を加えるとともに回答に偏りの大きい項目を削除するなどして本調査で使用する質問紙を確定した。また,ライティングに用いる方略についての質問紙は山西(2009他),ライティングする際の不安についての質問紙はCheng(2004)の研究で用いられた項目を採用して作成した。 前述のプロダクトの分析では「結束的要素」の使用数を指標とし,評価との関係性について検討を行った。その使用数は Halliday & Hassan (1976)で提案された枠組み,および自動評価プログラムCoh-Metrix 3.0を用いて算出された「指示」,「連結詞」,「語彙的結束性」の3つの指標を用いた。また,プロダクトの評価は,Nakanishi (2006)で用いられたEFL Composition Profileを用いた総合的評価とした。 分析の結果,3つの「結束的要素」の指標のうち,「指示」の「Personal Pronoun」の使用数とプロダクトの評価との間にのみ正の相関が見られた。研究協力者に対して課したライティング課題のトピックは各自の興味・関心に合わせて選択できるように3つ用意していたが,「Personal Pronoun」の使用数がトピック間で統計的に異なり,プロダクトの評価との間に正の相関が見られたトピックで最も多かった。つまり,ライティング課題として与えたトピックが影響していたと言える。また,主に会話で用いられる“I think”の多用や,語彙等の誤用も結果に影響を与えていることがわかり,語彙の使用や課題に合わせたレジスターや論理展開の方法の明示的な指導が必要なことがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度にはcohesionおよびcoherenceに習熟させるための明示的な指導を始める前の段階で,プリ・テストとして質問紙調査を行うとともに,ライティング課題を課す。質問紙調査は,英語学習に対する動機づけ,ライティングに用いる方略,およびライティングする際の不安の3つの領域について実施し,プロダクトの評価との相関について分析する。動機づけについては因子分析を行い,他の変数とのより詳細な関係性を明らかにする。 平成27年度に本研究とは別途行ったライティング・プロダクトに関する研究では,ライティング課題のトピックの精選や指導内容には改善の必要な点が見つかった。そのため,先行研究や予備実験の結果を踏まえ,プリ・テスト実施前に課題の再検討を行う。また,同研究では,ライティング・プロダクトにおける「結束的要素(cohesive devices)」の使用に関する分析しか行っていなかったが,予備実験の結果の分析も踏まえて,本調査における「一貫性(coherence)」に関する分析方法の確定を行う。 また,cohesionおよびcoherenceに焦点化した指導については,その内容を「モジュール」化(細分化)して『英語表現Ⅰ』を用いた通常の授業に組み込み継続的に行う。その教材の検討・作成はH27年度に引き続き実践と同時並行で行う。 さらに,年度途中に等間隔で2度のライティング課題に取り組ませるとともに,フィードバックを得て書き直し作業をすることでライティングの経験を積ませる。そして最終的に年度末に4度目の課題をポスト・テストとして行う。 すべてのデータが揃うH29年3月以降には,質問紙調査の結果とライティング・プロダクトの評価がどのように変化をしたのか分析を行う。ライティング・プロダクトの評価は英語母語話者2名と,本研究の研究代表者および分担者2名で行い,その信頼性も担保する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に予定していた国際学会での情報収集は,事前に公表されたプログラムに本研究の参考になると思われる発表が見当たらないことから参加を見送ったために旅費の部分で大きく翌年度以降への繰越が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度であるH29年度8月に開催される国内学会およびH30年3月に北米で開催される国際学会において本研究の成果を2名で発表する予定であるため支出が多くなる。そのためH28年度の予算からも若干最終年度への繰り越しが出る可能性がある。また、当初予定していた英語母語話者に依頼するライティング・プロダクトの分析に関わる作業量が予定よりも増えたため、謝金が当初の2倍程度になることが予想されている。その分も購入予定であった物品の内容を再吟味するなどして対応する予定である。
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