研究課題/領域番号 |
15K02811
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
鈴木 智己 旭川工業高等専門学校, 一般人文科, 教授 (70342441)
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研究分担者 |
沢谷 佑輔 旭川工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10733438)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ライティング / 動機づけ / 評価・測定 / cohesion / coherence / anxiety |
研究実績の概要 |
英語で書く文章の結束性(cohesion)と意味上のまとまり(=首尾一貫性: coherence)を高めることに焦点を当てた指導を実践する前後で、3種類の質問紙調査とパラグラフ・ライティングを課し、指導方法が与える影響を分析するデータの収集を行った。質問紙調査では、研究協力者となった高専3年生約120名の英語学習に対する動機づけ、ライティングの際に用いるストラテジー(方略)およびライティングをする際の不安の3つの指標を測定するとともに、パラグラフ・ライティングの課題では与えられたトピックについて100語程度の説明文(expository writing)を書かせた。 プリ・テストとポスト・テストの間の約9ヶ月間にわたり、「英語表現Ⅰ」の高等学校検定教科書を用いた授業を行いながら、cohesionおよびcoherenceに習熟させるための明示的な指導を行った。年度の終わりにポスト・テストとして課したパラグラフ・ライティングでは、2回のテストで用いる課題がほぼ同質のものになるように、両者とも説明文のパラグラフ・ライティングとし、トピックのみを変えて実施した。 ライティング・プロダクトについては、2名の英語母語話者と研究分担者1名がその質(overall quality)と意味上のまとまり(coherence)について6点満点で評価した。さらに、結束性を構成する要素(cohesive devices)の総使用数、およびその内正しく用いられているものの数を研究分担者1名が数えた。最終年度となるH29年に詳細な分析を行うのに備えて、欠損データの処理などを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27に実施した研究協力者の英語学習に対する動機づけを測定する質問紙(項目数31)、ライティングに用いるストラテジー(方略)を測定する質問紙(項目数9)、およびライティングをする際の不安を測定する質問紙(項目数16)をプリ・テストとして4月に実施した。また、与えられたトピックについて説明文(expository writing)のパラグラフを100語程度で書く課題を課した。その後、ディスコース・マーカーの用法、センテンス・コンバイニング、語彙的結束生(lexical cohesion)を生む類義語の使い方、比較や因果関係などのパラグラフ・ライティングで用いる典型的な文章構成など、文章のcoherenceに繋がる要素についての明示的な指導をライティング授業の中で9ヶ月にわたって断続的に行った。1月にはプリ・テストと同じ質問紙調査をポスト・テストとして実施した。また、パラグラフ・ライティングについてはプリ・テストと容易に比較ができるように、使用するレジスターや論理展開の方法(patterns of organization)が大きく異ならないように、トピックの一部のみを変えた課題とした。ライティング・プロダクトの分析にはファースト・ドラフトを用いたが、評価の後、Error Codeとコメントを併用した文法的フィードバック、内容は構成などについてのコメントによるフィードバックを行うことで気づきを促すことを意図した。 プロダクトの分析は英語母語話者2名および本研究の分担者1名が行った。予め用意したルーブリックを参考にしながら全体的印象に基づき、プロダクトの質と一貫性の2つの観点から6点満点で行った。また、プロダクトの結束的要素(cohesive devices)の使用については接続詞と語彙的結束性について研究分担者1名がその使用数と正しく使用された数を計測した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるH29年度は質問紙調査の結果とライティング・プロダクトの評価の関係性を因子分析、相関関係、重回帰分析などの手法により明らかにするとともに、指導の前後の各指標をt検定によって比較する。また、特に文法上および語彙上の結びつき(cohesion)と意味上のまとまり(coherence)に焦点を当てた指導により、英語学習に対する動機づけ、ライティングの際に用いる方略、そしてライティングに対する不安にどのような影響を与えたか検討を行う。具体的には、cohesionとcoherenceを高める明示的な指導により、ライティングの質が高まり、それに伴ってライティングという言語活動をより肯定的に捉えることができるようになるとともに、ライティングに対する不安も抑制され、ライティング方略も改善されるという仮定を検証する。研究の結果を国内外の学会において発表をするとともに論文としてまとめることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の経過報告を国内外の学会で発表しているが、その内、国際学会での発表が当初予定していた北米の学会ではなくタイで開催された学会へ変更となったため、旅行期間が短くなったことに加えて航空運賃およびホテル代が安くなったことにより大幅に旅費が少なくなった。また、国内学会についても交通の便が良い東京近郊での開催であり、本務の都合により最短の一泊二日での旅行となったため、これについても旅費が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究最終年となるH29年度は、8月に開催される国内学会で2年目までの研究の概要報告を、また年度末に北米で開催される国際学会では本研究の最終報告をする予定であり、研究代表者と分担者の旅費を支出する予定である。また、実施した質問紙調査に含まれる記述式の回答の質的分析のためにテキスト・マイニングの統計ソフトウェアを新規購入する。
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