最終年度である本年度は、これまでの教育現場教員からの聞き取り調査の結果を踏まえつつ、各研究担当者ごとに見いだされた課題についてのまとめ作業に入った。その際、本研究の実施中に行われた学習指導要領の改訂に新たに実践的に対応するための具体性のある成果の公表が必要であるという認識を共有した。 具体的には、本研究課題の設定時の予想をはるかに上回る速度で進められた学習指導要領におけるアクティヴラーニングの全面化に対応するために、研究課題の設定を柔軟に解釈しつつ、またここまでの教育現場教員からの聞き取り調査結果などを十分に反映するために、新しい教材提供を、現在までの歴史学が蓄えてきた学知を十分に反映する形で、より実践的に教育現場に還元することが必要であり、それにこたえうる研究成果の公開を目指した。今年度は小島茂稔「「教科に関する科目」をめぐる問題状況」(『東京学芸大学教育内容構成学開発研究機構『新たな視点からの「教科の内容と指導法の融合に向けた調査研究・開発報告書』,2018年)の公刊に至った。 なお残された研究成果について、個別的には、高等学校地歴科における「歴史基礎」の新設と必修化に対応するための近現代史教材のための、歴史学における研究成果と資料の収集整理と、また廃止される高等学校地歴科の「世界史A]から中学校「歴史」分野に移行される前近代史分野における研究成果と資料の収集整理を進めたが、学習指導要領の改訂が研究課題の推進途中であったこともあり、公刊にはまだ若干の時間を要することとなった。 なお、本課題設定の前提となる歴史学学知の蓄積という観点からは、本研究担当者3名が直接主体的にかかわった歴史学研究の成果として公刊した『竹内好とその時代 歴史学からの対話』(黒川みどり・山田智編、有志舎、2018年)もまた、本研究に資する成果の一つと位置付けられる。
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