研究課題/領域番号 |
15K02817
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
河上 暁弘 広島市立大学, 広島平和研究所, 准教授 (30515391)
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研究分担者 |
高橋 博子 明治学院大学, 国際平和研究所, 研究員 (00364117)
桐谷 多恵子 長崎大学, 核兵器廃絶研究センター, 客員研究員 (30625372)
竹本 真希子 広島市立大学, 広島平和研究所, 講師 (50398715)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歴史教育 / 平和教育 / 平和博物館 / 記憶の継承 / 平和創造 |
研究実績の概要 |
本研究は、歴史教育・平和教育の現状と課題を探るため、平和博物館における教育プログラムの調査と聴き取り調査、およびそれらを分析する研究会等を行うことにより、日本における歴史・平和教育と平和博物館展示に関する共通の課題を探ろうとするものである。 本年度は、「平和教育」「平和博物館」の定義、研究動向、課題を探ることを目的として調査研究を行った。進め方としては、博物館での実地調査を含む調査研究を研究代表者・分担者の計4人それぞれが独自に行い、意見交換をするという形で進められた。また、報告者を招いた公開研究会を3回開催した。 今年度は、「戦後70年」あるいは広島・長崎への原爆投下70年(被爆70年)ということもあり、戦争体験の継承や「戦後」の歩みや意味を問い直すというテーマに関心の高い一年であり、また、いくつかの平和博物館では展示のリニューアルが進められ、被害展示・加害展示のあり方を含めて、あらためて展示内容や展示方法をめぐって多くの議論が惹起された(ピースおおさかなど)。そうした国内外の議論状況や研究状況も踏まえて、本年度は、本研究自体の基礎・土台となるような論点を探ることを目的とし、特に、公開研究会では、「歴史」、「教育」、「博物館」の3つの視点それぞれからの研究・討論を重視し、①ドイツにおける市民レベルの歴史継承と和解のための実践(ふくもとまさお「戦後70年 戦争加害国ドイツの話をしよう」2015年10月1日)、②平和と教育の関係(堀尾輝久「平和と教育―戦後の体験から」2015年12月5日)、③博物館論の視点から見た平和博物館の意義と機能(兼清順子「平和博物館の機能と役割―立命館大学国際平和ミュージアムの日常業務から―」2016年2月21日)の報告をもとにした研究会を開催し、本研究全体の基礎的論点の理解を深め、かつ課題を浮き彫りにできたと思う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、まず歴史・平和教育や平和博物館の基礎論点と近年の研究動向を明らかにすることが目標とされていた。その意味では、各自の文献調査・研究に加えて、専門的知見や実務経験を持つ研究者の報告およびそれに基づく討論により、一定程度深められたとは思われることから、当初の目標はある程度は達成できたのではないかと思われる。 また本研究以前の研究成果(広島市立大学特定研究費研究2012-2013年度)も含めてまとめられたものではあるが、日本の平和博物館に関する研究成果として、本研究の研究分担者である竹本真希子・広島市立大学広島平和研究所講師(上述の特定研究費研究の研究代表者)により、研究ノート「日本の平和博物館とヒバク情報」がまとめられるなど、日本の平和博物館に関する研究に関する論点と課題を提示する試みもすでに行われている。ここで提示された論点・課題等も今度の研究において深めて行きたいと思う。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度の調査・研究で得られた知見をもとに、今後の研究調査において、歴史・平和教育と平和博物館の関係について明らかにしていきたいと思う。 そのためにも、歴史教育や平和教育そのものの論点や研究動向を調査するとともに、今年度からは、平和博物館において、展示がいかにしてつくられたか(つくられるべきか)、またその展示を含めた平和博物館の機能が戦争・ヒバク体験の継承や歴史・平和教育、平和の創造という面において、いかに活かされてきたか(活かされてこなかったか)、また今後、いかに活かされていくべきなのか(その課題は何か)について、調査・研究することが必要であると思われる。また、博物館の調査においても、できあがった展示を見て、その展示のあり方、傾向、課題を探る調査にとどまらず、さらに、展示の<前>(展示に至るまでの資料の取捨選択過程など)と<後>(展示が歴史・平和教育等にいかなる影響を与えているかなど)において平和博物館が持つ機能等の意義、限界、課題などを明らかにするような調査・研究をおこなっていきたいと思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の一人が年度末付近に計画していた沖縄等での調査や物品購入や資料集の計画等が体調不良等により延期となったため。また、2015年度末におこなわれた公開研究会の記録作成(反訳業務)は2015年度中に完成することは不可能であったため、次年度(2016年度)予算をもっておこないたい。
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次年度使用額の使用計画 |
あらためて沖縄での調査を2016年度の早いうちに行いたい。また、2015年度末におこなわれた公開研究会の記録作成(反訳業務)は、本年度(2016年度)予算をもっておこないたい。
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