本年度の主な研究実績は、下記の3点である。 (1)占領地・植民地における<グレーゾーン>問題に関する国内外の資料文献調査及び収集・整理を行い、併せて同問題について先行研究の整理を実施した。特に西洋史研究者による<グレーゾーン>研究の動向を把握するのに務めたが、西欧及び東欧の「全体主義体制」に関する研究において、敵/味方、協力/抵抗などの「二分法的な歴史分析」を克服する目的で<グレーゾーン>と類似した研究の視点が培われていることが確認された。 (2)<グレーゾーン>概念の有効性を検証するために2016年11月に大妻女子大学で開催した国際シンポジウム「グレーゾーンとしての戦時上海」の内容を、『現代中国研究』第39号に「特集:グレーゾーンとしての戦時上海」として掲載した。それに引き続き戦時上海グレーゾーンを生き抜いた人々に関して2018年2月に日本大学で国際シンポジウム「戦後上海の選択」を開催した。また2017年12月に愛知大学で開催したシンポジウム「東亜同文書院、アジア主義、対日協力政権」において<対日協力政権のグレーゾーン>に関する報告行い歴史方法論としての重要性を明らにした。 (3)<グレーゾーン>問題に関心を持った西欧及び東欧史、東洋史の研究者により2017年12月に「グレーゾーン研究会」が組織された。同研究会では<グレーゾーン>概念のあり方を再検討し、今後2、3年の間に占領地・植民地における<グレーゾーン>問題を主題とする学術書を刊行することになった。
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