先行研究や研究代表者の研究により、これまで孝謙・称徳天皇は、「天」に可否を問うことで、皇位継承者の決定を行っており、その「天」には仏教が加わっていることが明らかにされてきた。これらを踏まえ、本研究では、孝謙・称徳天皇による仏教的な「天」に依拠する現説は、父である聖武太上天皇没後にみられるものであり、孝謙・称徳天皇自身の王位の正当性に不安が残る中で、その権威に依存したものであることを明らかにした。あわせて、(1)道鏡の法王任命は、「天」によるものではないことを解明することで、有力な学説であった法王=皇位継承者説は誤りであることを示し、(2)国分寺・国分尼寺の政策もこれらと一体であることを論じた。
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