本研究は、京都大番役の成立・展開を、Ⅰ平安末期、Ⅱ治承・寿永内乱期(文治年間以前)、Ⅲ鎌倉前期(建久年間から承久の乱以前)、Ⅳ鎌倉中後期の4段階に区分したうえで、大番役の警固対象を(a)里内裏警固、(b)大内守護、(c) 院御所警固の3警固役に分けて、それらの変遷・展開を実態的に解明しようとするものである。 研究の最終年度にあたる平成30年度は、平成27年度からの3年間にわたる史料収集作業の結果を前提に、これまでの収集対象から漏れていた『中山法華経寺史料』や『帝王編年記』、『日本古典文学大系 親鸞集 日蓮集』などの史料集を補足的に検索するとともに、Ⅰの時期については院政期における武士の移動の問題、Ⅱの時期については平氏権力の基盤を鎌倉幕府権力がどのように継承したのかという問題、Ⅲの時期については鎌倉幕府の建久年間の御家人制整備政策に関する問題、Ⅳの時期については13世紀半ばにおける御家人制の変質に関する問題などを意識して、これらの研究史を読み込みつつ、全時期にわたる収集史料の検討を進めた。 昨年度までの研究によって、1230年~40年代に鎌倉幕府の京都大番役の体制が整うという見通しを得ていたが、最近の勅使河原拓也氏の研究によれば、宮騒動・宝治合戦を契機に13世紀半ばに京都大番役の対象は非御家人にまで拡大され、御家人制そのものが拡大する方向性をもったという。このような業績を踏まえると、京都大番役の在り方は、Ⅳの鎌倉中後期の枠内においても大きく変化しており、どこかの時点に完成型を求めて大番役の成立や整備を議論することは適切ではないと判断した。本年度はそうした問題意識から、Ⅰ~Ⅳの全体の時期を通して、京都大番役が鎌倉幕府権力の形成・展開・変質とどのように関係していたのかを、実態的・総合的に分析した。 本研究に関連する成果として、本年度は図書1件を公表し、3件の学会発表を行った。
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