研究課題/領域番号 |
15K02832
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
長谷川 博史 島根大学, 教育学部, 教授 (20263642)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中世 / 日本海水運 / 山陰地域 |
研究実績の概要 |
本研究は、中世山陰地域の流通構造とその展開について、金属資源の生産・流通とその変化に着目する観点から、西日本海水運との連関構造を追究し、明らかにすることを目的としている。具体的には、鉄(中国山地、特に出雲国南部を中心的検討対象とする)、銅(都茂丸山鉱山を中心的検討対象とする)、銀(石見銀山を中心的な検討対象とする)の3種の金属資源を手がかりとして、内陸部を含めた流通が、西日本海水運とどのように関連していたのかを明らかにし、海 域を含む中世山陰地域の流通構造の特徴と変化について、その全体像をとらえなおそうとするものである。 そのため、平成28年度においては、[1]産出地域・流通経路に関する資料の収集を、さらに進めた。特に、石見銀山や益田関係の史料のなかから地域資源の流通に関わると思われる史料の収集を進めた。次に、[2]産出地域・流通経路に関する考古学情報を、引き続き収集した。特に、考古学関係者との頻繁な交流を通して、富田川河床遺跡、石見銀山関連遺跡、中須東原西原遺跡、沖手遺跡に関する、いずれも最新の考古資料情報を引き続き入手できたことは、非常に有益であった。それらの成果をふまえて、[3]物流拠点の復元的考察について、富田城下町の復元的考察を行い、特に地籍図の分析を通して、中世富田城下町の物流拠点の配置について踏み込んだ検討を行った。具体的には、広島大学図書館所蔵「中国五県土地・租税資料文庫」所収の町帳村絵図・古川村絵図・矢田村絵図・富田村絵図・石原村絵図(多くは1872~1875年)をはじめ、それぞれの村の17世紀を中心とする検地帳、島根県立図書館所蔵の「寺社明細帳」などを対校し、富田城下周辺の歴史的景観を詳細に検討することができた。また、考古学分野の成果について集めた情報を活用して、富田川河床遺跡出土の鉄原料の様相を、復元的考察に関連づけて検討できた点は、有意義であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の石見銀山研究会(大田市、2015年6月20日)、日本貿易陶磁研究会(米子市、2015年9月26日)、大内氏歴史文化研究会(山口市、2016年3月6日)に引き続いて、平成28年度においても、芸備地方史研究会(東広島市、2016年7月3日)、城下町研究会(米子市、2016年11月19日)、島根県古代文化センターテーマ研究共同検討会(松江市、2017年3月9日)などの研究会において、講演・報告する機会を得るとともに、それらの準備段階を含めて、多数の考古学関係者(島根県教育委員会、島根県古代文化センター、鳥取県教育委員会、米子市教育委員会、安来市教育委員会、大田市教育委員会、益田市教育委員会の文化財担当者など)と情報交換・情報共有の機会に恵まれ、山陰海岸全体に関わる中世や中近世移行期の地域資源と地域社会の関係について、多角的に検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、[1]産出地域・流通経路に関する資料の収集に関しては、引き続き、出雲国・伯耆国日野郡を中心とする資料、益田川流域・石見国美濃郡において産地や流通経路に関する資料、石見国迩摩郡を中心に石見銀山と銀の流通経路に関する資料を、それぞれ収集・整理・検討する。[2]産出地域・流通経路に関する考古学情報の収集に関しては、中世製鉄遺跡群・富田城跡・富田川河床遺跡、大山寺僧坊跡遺跡、益田川流域の大年ノ元遺跡・沖手遺跡・中須西原遺跡・中須東原遺跡、石見銀山出土遺物に関する情報を収集する。[3]物流拠点の復元的考察については、富田・美保関・米子・安来・白潟・平田・杵築、高津川・益田川河口地域の古益田湖・中世益田、温泉津や浜田など海岸部の港町、等々の復元的考察を進める。さらに、[4]金属資源の流通構造と西日本海水運の連関構造の解明を進めて、本研究の取りまとめを行う。
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