研究課題/領域番号 |
15K02834
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
下向井 龍彦 広島大学, 教育学研究科, 教授 (60171005)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 賀茂祭 / 内裏儀 / 禊祭行事 / 行事蔵人 / 女使用途 / 幣料 / 唐鞍修理料 / 内蔵寮請奏 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、研究員・院生・学生の協力を得ながら、六国史・故実書・古記録から平安時代の賀茂祭関係とりわけ賀茂祭用途に関する史料の抽出・整理を行い、賀茂祭関係史料データベースの作成を継続している。また今年度も葵祭を実際に見物して、賀茂祭行列・祭祀について豊かなイメージ形成の一助とした。作成中の賀茂祭史料データベースをもとに摂関期の賀茂祭運営・用途調達のうち、禊祭料官符で諸国から斎院に直納させる斎院行列用途ではなく、内裏から出発する勅使・女使らの御幣・行列・飾馬などの用途についての検討した。その結果、内裏儀ではあるが、蔵人・蔵人所が独自に財源調達したのではなく、天皇が内裏から派遣する勅使・女使らの用途も天皇(行事蔵人)が行事上卿=太政官に概算要求し(「勘宣旨」)、太政官は要求額を査定して先例増額分をカットして答申していたという注目すべき事実が明らかになった。この事実を財政構造として一般化すれば、内裏儀=蔵人方行事の財政についても太政官の強力な統制下で大蔵省など財源保管機関発行手形(切下文)による諸国直納によって運用されていたという王朝国家財政構造の実態の一環を解明し、論文草稿を用意しつつある。その結果、内裏儀ではあるが、蔵人・蔵人所が独自に財源調達したわけではなく、太政官=禊祭行事上卿―弁―史が財源調達に大きく関与していたこと明らかになった。 この事実を摂関期王朝国家の財政構造の特質として一般化すれば、内裏儀=蔵人方行事の財政についても太政官の強力な統制下で大蔵省など財源保管機関発行手形(切下文)による諸国直納によって運用されていたという王朝国家財政構造の実態の一環を解明し、論文草稿を用意しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記した研究実績に記載したように、史料の収集作業はほぼ順調に進んでいるが、分析・検討作業がまだまだ不十分で、草稿にまとめた研究成果を「論文」として完成させるにはいたっていない。それは授業・院生学生指導や依頼された著作執筆のため、本研究に十分な時間が割けないことが要因であり、著書を完成させたら、本研究に専念でき、遅れを取り戻すことができる。
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今後の研究の推進方策 |
上記進捗状況に記したように、出版社からの依頼原稿の仕事が完成したら、本研究に専念できるので、研究の遅れは取り戻すことができる。研究計画に大きな変更はない。
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