日本古代における漢籍伝来時期を明らかにするために、最終年度に行った研究内容とその成果を以下に列挙する。 1.書籍目録の研究 漢籍伝来時期を明らかにする上で一番鍵となる史料が書籍目録であり、『隋書』経籍志と『日本国見在書目録』という日中双方で最も重要な書籍目録の史料的な性格を明らかにすることができた。本研究の中心的な成果であり、それぞれ「中日書目比較考」、「『日本国見在書目録』に見える重出書について」という論文にまとめ、学術雑誌に発表した。 2.伝来漢籍の写本調査 九州国立博物館所蔵「晋書零巻」の写本調査の結果を、研究会で発表後、「九州国立博物館蔵「晋書列伝第五十一零巻」について」という論文にまとめ、現在投稿中である。「晋書零巻」の史料的な性格を明らかにすると共に、旧所蔵者により分断された僚巻との関係についても論じた。 3.漢籍伝来状況の概観 日本古代の各時期にどのような漢籍が舶載・伝来されたかについて、概観する研究を行った。「将来された書物」という題で研究論文集に寄稿した。本研究の全体像を示すことができた、と考えている。 4.漢籍受容の研究 いつどのような漢籍がもたらされ、それがどのように受容され、日本の文化・社会に如何なる影響を及ぼしたか、について研究を行った。その成果は、「「国風文化」における「漢」と「鄙」」という論題で学会シンポジウムで発表したほか、「中国の法・制度の受容」という論文にまとめ投稿中である。前者は、平安時代中後期にもたらされた漢籍が「国風文化」に与えた影響について論じている。後者は、法律書が古代日本にどのように受容されたか、法制度形成の問題として論じたものである。
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