本年度の研究実績をまとめると、以下の2項目となる。 ①継続してきたCIE宗教課カンファレンスレポートのデータベース化を進めた。 特に、昭和23~24(1948~1949)年分の記事を対象とした。これまで低調だった作業効率を向上させるために、OCRソフトを活用し、リサーチアシスタントを雇用した。また、同レポートの写真データをプリントし、全16巻(1巻あたり約450頁)編成の資料集を簡易製本した。これを活用することで、これまで時間を要していた入力内容の確認や補正の作業を行いやすくなった。 ②カンファレンスレポートの記述内容を分析し、その成果を論文にまとめた。 神道指令以後、皇室と神社界の関係をめぐって、日米間でどのような協議が行われたのか、同レポートの内容と日本側の記録を対照させながら検証した。これにより、以下のことを明らかにした。伊勢神宮祭主の人選に関して、神宮側は当初、男性皇族を祭主とする案を提示したが、CIE側から軍歴を理由に追放リスクがあるとの注意喚起を受けた。そこで、女性皇族を祭主とする案が急浮上したが、その決定に宗教課長バンスの発言が影響したか否かをめぐって、日米間で認識にズレが生じていた。また、皇籍離脱となる皇族を神社界に迎え入れようとする動きが一部で見られたが、CIEから追放リスクがある旨を示されたり、反対されたことによって、抑制された。さらに、神社界に対する追放策の適用可否をめぐって、民政局(GS)とCIEの間で交わされた議論を明らかにした。最終的には、CIE自らが政策理念に掲げる「政教分離」や「信教の自由」との関係もあって、追放策適用は見送られたが、勅令第101号の部分適用が認められた。その他、神宮のあり方に対するCIEの干渉の実態について明らかにした。また、日米交渉におけるコミュニケーション上の問題点について指摘した。
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