研究課題/領域番号 |
15K02851
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
末松 剛 九州産業大学, 国際文化学部, 准教授 (20336077)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 平安貴族 / 宮廷儀礼 / 饗宴 / 史料研究 / 儀式書 / 有職故実 |
研究実績の概要 |
本課題申請者は、平安時代の宮廷儀礼を分析することで、当時の貴族社会における儀礼文化の歴史的意義を解明する研究に携わってきた。そのために対象とする歴史史料は、古記録・儀式書をはじめとして、指図・絵図のほか文学作品といったさまざまな史料を含んでいる。それぞれに成立事情が異なる史料であるが、それ自体の読解を深めるとともに、お互いを考え合わせて合理的解釈を加えることで、儀礼の場で展開された事象の歴史的意味を、正確にかつ広く導くことができる。 以上の研究の遂行と並行して、研究の基礎作業といえる検討史料の歴史的性格を再検証する必要がある。そうした検討にはそれぞれの分野で先行研究があるものの、いまだ刊行されていない史料、刊行されているものの写本校合によってより正確な記述が解明できるものも少なくない。したがって、史料を利用して研究課題を遂行するばかりでなく、自ら史料批判を加えることによって、儀礼研究に有効な史料の見極めが必要である。本課題を「史料学的研究」と称する所以である。 本年度は昨年導くことができた課題に即して『年中行事抄』の写本調査、以前より着目していた江戸時代の故実書『滋草拾露』の写本調査に当たった。いずれも次年度への継続課題となるが、所蔵先の概要はすでに把握しているので、次年度も速やかに調査を進めていきたい。 また、当初は新たな研究会を主宰する予定であったが、歴史物語を活用した儀礼研究を企図して、歴史物語研究会に9月と12月の2回参加する形をとった。研究会のテーマに恵まれ、歴史学の立場から質疑に参加し、文学研究との有用な議論を交わすことができた。次年度ではその成果を自らの論考とし成果に結び付けることにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度が報告・論考発表と続いたので、本年度はもっぱら参加者に徹し最新の研究動向の吸収につとめた。参加した学会・研究会は、歴史学研究会大会、日本史研究会古代史部会、歴史物語研究会などである。また、論考も執筆し、掲載書が共著であるため本年度は未刊行となったが、平安宮の問題、『江家次第』を素材とした儀式書論の計二編を仕上げることができた。 史料調査では、宮内庁書陵部、東京大学史料編纂所、国立公文書館、刈谷市中央図書館、龍谷大学図書館を訪れ、写本校合と史料のデジタル撮影、複写史料の調達につとめた。目録には載っていない写本の存在、目録の誤記による予定外の発見など、本調査の結果をきちんとした形で発表しなければならないこと、ひいては本研究課題の意義をあらためて感じることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も史料調査と未刊行ながら論考の執筆と並行して進めることができ、研究は順調に進捗している。史料学的研究としてとくに着目している史料の写本校合と、所蔵機関毎の目録の作成、最終的には最善本テキストの構築を目標として、残りの年度も調査研究につとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
史料学的研究と題して史学・文学・美術史に関する文献・絵画を検討してきたが、服飾史にも視野を広げる中で、現在復元的に製作されている装束の入手を考えるようになった。いくつか先方に打診したところ、数ヶ月の規模で時間のかかるものであるため、次年度にかけて話し合いをすることとし、もし購入となった場合に備えて、使用額を次年度にまわすこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
五月より先方との交渉を再開する予定である。ただし、研究費を大幅にこえる金額となった場合には断念し、文献・絵画史料の入手に方針を戻すこととする。
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