九州南部の墨書土器・硯・転用硯を集成するとともに、古代地域社会における文字文化の伝播を検討した。西海道諸国では、先進的な文物・文化は大宰府から伝えられると考えられてきているが、奈良時代に瀬戸内地域から直接持ち込まれた陶硯が出土するなど、文字文化の伝播ルートが複数であることが確認できた。古代末期の墨書陶磁器の広がりについても、博多経由がメインルートであるものの、奄美諸島における出土例から、中国南部からの直接的な流入も想定できた。また古代の国府跡では膨大な転用硯を確認し、文字を使った活動が活発であったことを明らかにした。
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