研究課題/領域番号 |
15K02858
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横山 伊徳 東京大学, 史料編纂所, 教授 (90143536)
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研究分担者 |
荒木 裕行 東京大学, 史料編纂所, 助教 (70431799)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 藩専売 / 市中取締類集続集 / 日蘭追加条約 / 諸問屋再興調 / 株仲間解散令 |
研究実績の概要 |
2015年度は大きく分けて三つの作業に取り組んだ。一つは、幕末期における幕府の藩専売対策の経年的変化に関する、基礎的事実の確定作業である。これは、主として、国会図書館蔵旧幕引継史料『市中取締類集続集』にある「諸国産品之部」の分析である。これにより、諸藩が国産品を藩邸に出入りする売捌人により取り扱うことにより、江戸問屋仲間との間で特定の関係を構築することが明らかとなった。そして株仲間解散令は、この関係を消滅し、売捌人の個別問屋・小売商人たちとの取引を認めたものあることが明らかとなった。 二つは、各藩における嘉永期以降の藩専売政策の動向である。主として、対馬藩、福井藩、佐賀藩などについて、開港後の動きまで含め、関係史料を収集した。嘉永期に株仲間が再興されるが、各藩は、三都問屋仲間以外の専売先開拓に重心を置くようになり、安政期になるといわゆる追加条約による脇荷貿易の開放によって、それまで例外的に認められていた国産品の長崎向仕組が注目される過程を示す史料を収集した。これには、出島オランダ商館文書における関係史料の目録化によって、日本側とオランダ側の動向の突合せを平行して進行した。 三つは、東京大学史料編纂所編『諸問屋再興調』のデータベース化のため、第一巻から第六巻までメタデータの入力を行った。特に各上申書などに付属史料として収められている先例を含め、メタデータとすることにより、問屋政策をある程度さかのぼって検索できるよう配慮した。初年度であるので、抽出項目の整序などいくつかの工夫を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
幕府の問屋仲間・国産品専売政策については、天保期までは、当該期史料の全文入力が相当程度進行し、売捌人の性格を追うことにより、幕府と藩との国産品専売政策の変転を跡づけられるという見通しをえた。 諸藩の国産品政策の変化にとって、長崎貿易の契機が再確認できたが、こうした観点にたった専売政策の再検討は始まったばかりである。 入力データについては量的には順調に進んだが、入力基準について試行錯誤の時期があり、初期入力データについては、整序が必要となっている。
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今後の研究の推進方策 |
問屋仲間と国産品専売政策については、国会図書館蔵旧幕引継史料『市中取締類集続集』にある「諸国産品之部」の入力、分析を継続する。特に、幕府自身が専売策を採用する文久期の前提となる、諸動向に注目する。 諸藩については、対馬藩を始め、佐賀、南部などに重点をおき、更に長崎における諸藩の動きを重視した史料収集を行う。 『諸問屋再興調』の入力を第七巻から第十三巻程度まで進め、既入力分については、試験的にシステムに搭載できることをめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
入力データの納品が、年度末ぎりぎりになったので、データ校正のための人件費が使用できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、入力データの校正を当初から開始しており、夏を目途に終了する予定である。
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