研究課題/領域番号 |
15K02860
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
高橋 美貴 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90282970)
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研究分担者 |
高橋 陽一 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (40568466)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地域史 / 歴史資料の整理 / 森林 / 地域社会 / 文化 |
研究実績の概要 |
本研究は、東北地方、なかでも仙台藩領を主なフィールドに、沿岸地域と内陸地域の二つの地域を拠点とすることで、藩の林政や流域史なども意識しながら、地域の自然資源の利用・管理や地域社会史に関する歴史的資料の発掘・整理と分析を進めることを目的としている。本年度は、以下のような実績を得た。 1、沿岸地域の森林資源の利用・管理に関する研究としては、東日本大震災の被災からレスキューされた女川町横浦・木村家文書などの分析を行い、研究代表者が2016年2月に蕃山房から『仙台藩の御林の社会史 三陸沿岸の森林と生活』を刊行した。 2、内陸地域の研究拠点では、一関市大東町金家文書の整理・分析を進めた。具体的には、次のような作業や企画を実施した。 (1)6月21日・7月26日・8月29日~8月31月に、同家にて所蔵資料の整理・撮影作業を実施した。また、史料の一部は借用のうえ、東北大学災害科学国際研究所歴史資料保存研究分野にて整理・撮影を進めた。(2)これらの作業に基づいて、6月20日には一関市大東コミュニティセンターにて「磐井の江戸時代をほりおこす」と題した現地報告会兼シンポジウムを開催することができた。(3)今後の研究の拡がりも射程に入れ、7月25~26日には、大東町内の歴史資料を確認するための巡見を地元資料館(芦東山記念館)・地元郷土史家の方々とともに実施した。(4)2月28~29日には、現在、金家の資料整理を協同して進めているメンバーが集まり、研究分担者の所属する東北大学を会場に目録の作成を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、東北地方、なかでも仙台藩領を主なフィールドに、1.沿岸地域と2.内陸地域の二つの地域を拠点とすることで、藩の林政や流域史なども意識しながら、地域の自然資源の利用・管理や地域社会史に関する資料の発掘・整理と分析を進めることを目的としている。 1.については、①「牡鹿郡女川町木村家文書」、②「同町丹野家文書」、③「同町須田家文書」のほか④「桃生郡名振浜永沼家文書」を素材に、史料の収集・分析を進めることを一年目の作業課題としていた。前述したように、研究代表者がこれらの作業を行うとともに、2016年2月に蕃山房から『仙台藩の御林の社会史 三陸沿岸の森林と生活』を刊行することができた。 2.については、「一関市大東町金家文書」の整理・撮影活動を進めることと、史料調査の概要や史料紹介を内容とした地元での説明会を実施することを本年度の課題としていた。これについては、(1)6月21日・7月26日・8月29日~8月31月に、同家にて所蔵資料の整理・撮影作業を実施するとともに、(2)6月20日には一関市大東コミュニティセンターにて「磐井の江戸時代をほりおこす」と題した現地報告会兼シンポジウムを開催することができた。2月28~29日には、資料整理を協同して進めているメンバーが研究分担者の所属する東北大学に集まり、資料の目録の作成作業を実施した ただし、所蔵者宅での史料の整理・撮影のための作業集団が20名以上に及び、所蔵者にご負担を与えるなどの問題も生じた。次年度はこの点に配慮し、所蔵者の御了解をいただいたうえで、史料の一部を借用のうえ、東北大学にて整理・撮影を進めるほか、現地調査をする際には作業集団の規模を縮小する必要性があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
仙台藩領を主なフィールドに、1.沿岸地域と2.内陸地域の二つの地域を拠点とすることで、藩の林政や流域史なども意識しながら、地域自然資源の利用・管理や地域社会史に関する資料の発掘・整理と分析を進めるという本研究の課題のうち、1.についてはブックレットの刊行という形で形のある成果を出すことができたため、次年度に向けてこれを元にした地元報告会など地域還元の企画を検討したい。 一方、2.については、本年度と同様、「一関市大東町金家文書」の整理・撮影作業を継続したいと考えているが、前述したように、史料の整理・撮影のための作業集団が大人数に及び、所蔵者にご負担を与えるなどの問題も生じている。このことを踏まえ、次年度は所蔵者の御了解をいただいたうえで、史料の一部を借用のうえ、研究分担者の所属する東北大学にて整理・撮影を進めるほか、現地調査をする際には作業集団の規模を縮小して実施する必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、当初予想していた調査先での大規模調査が1回に終わったことが、剰余金が生じた理由である。本研究では、1度の調査で、史料所蔵者個人宅で20~30名ほどの参加者を2~3日間投入することでスピーディーな史料の整理・撮影を実施する体制をとっていた。しかし、この投入人数の多さが史料所蔵者にご負担を与えることになった。このため、本年度は、このような規模での現地調査を夏季の1回に止めることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
調査先のご負担を勘案し、史料所蔵者の御了解をいただいたうえで史料を借用し、研究分担者の所属する東北大学にて整理・撮影を行うという形で、本研究課題に必要な作業を進めることを計画している。実は、本年度後半に、このような形での史料の整理・撮影を開始しており、念のため年度途中で仙台に拠点をもつ研究分担者への分担金を急きょ増額する措置もとった。次年度は、借用する史料の量を増やすとともに、仙台での作業に従事できる人数を増やすことで、作業を滞りなく進めていきたいと考えている。また、調査地である一関市大東町地域には、金家以外にも、かつて大肝入を勤めた家文書群が複数残されている。資金も勘案しながら、これらの文書の概要調査なり、場合によっては整理・撮影作業などを、二年目の作業のなかに組み込むことも検討したい。
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