平成29年度は、27、28年度に引き続き、1.藩地域アーカイブズを構成する主要史料の体系的な調査と電子化、2.これらを前提とした担当毎の分析作業、3.公開研究会の開催や主要史料の翻刻刊行等による知見の共有と総合、の3点から進めることとし、とりわけ最終年度であることから、外部研究者を招聘した研究集会の開催や成果物刊行等により総括と展望を図ることを目指した。 1に関して、藩政史料については新発田市立歴史図書館整備事業の進捗との関係で引き続き断片的な調査にとどまったが、他方大庄屋アーカイブズについて再整理を進め、その結果以下の成果につながった。 2について在地史料分析担当の原は、藩行政上他領への情報収集活動が大庄屋・名主などの村役人層に担われていたことに注目し、研究発表をするとともに、後述の史料集を編集刊行した。また、災害時の村役人層の他領情報収集や、隣領新潟町の蔵宿を介した金融など、新発田藩をめぐる他領との関係の諸相について論文、史料紹介を発表した。一方藩政史料分析担当の浅倉は、新発田藩政史料の分析をすすめ、城受取役に関わり他領の情報が集積されるという論点を獲得し、これに関し研究報告、史料紹介を行った。 3については、九州大学福田千鶴教授をお招きして公開シンポジウム形式での研究会を開催し、本研究課題の成果と今後の展望を確認する機会を得ることが出来た。また、上記村役人層の他領情報収集活動をテーマとして史料集を刊行することが出来た。 以上により、やや遅れる形で推移した当研究課題による研究活動は、最終年度でその遅れを取り戻し、当初予定の計画をほぼ達成したといえる。その中で、支配錯綜地域の藩社会は、藩士・役人のみならず村役人層を含めた重層的な他領との意識的な関係構築により、成り立っていたということが出来、その構造を具体的に示し得たことが、本研究の意義であるといえる。
|