研究課題/領域番号 |
15K02871
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高澤 弘明 日本大学, 生産工学部, 講師 (00459835)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | BC級戦犯 / 横浜裁判 / 折尾事件 / 柴田次郎 / アメリカ第8軍 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はBC級戦犯横浜法廷で審理された『BC級(アメリカ裁判関係)横浜裁判・第168号事件』、通称「折尾事件」を通して、死刑宣告やその執行に際して再審手続きで用いられた法理論の分析を試みるものである。横浜法廷で宣告された死刑の執行にあたっては、同法廷の適用法規である戦争犯罪被告人裁判規程5条h項により連合国軍総司令官のマッカーサーの事前承認が必要とされ、この承認手続きが死刑宣告に対する「再審」となる。実際、横浜法廷で死刑宣告を受けた被告人のなかには、この承認手続きで終身刑などに減刑された者もいる。本研究ではこの死刑宣告の減刑措置に関して、どのような理由に基づいて行われたかを法的に分析するものである。特に本研究では、報告者が所持している『柴田次郎BC級戦犯横浜法廷資料』のうち、死刑宣告からの減刑措置がとられた「折尾事件」をリーディングケースにして、他の類似事件(特に上官命令による捕虜殺害処分)との比較を行いながら、国立国会図書館が所蔵するReviews of the Yokohama Class B and C Class War Crimes Trials by the U. S. Eight Army Advocate 1946-1949や、国立公文書館が保管する横浜法廷の関連資料、さらにはアメリカ国立公文書館の資料を調査・分析し、同法廷の審理や刑罰の運用実態について明らかにする。 本年度(28年度)は本研究の中間成果報告として、横浜法廷における初期の日本側弁護態勢に関する調査結果を執筆した(髙澤弘明「BC級戦犯横浜法廷における日本人弁護人の費用負担問題について」日本情報ディレクトリ学会誌15号・掲載予定)。 また、資料収集のため、平成29年3月11日から25日にかけて米国に出張し、アメリカ国立公文書館での資料調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
27年度は本研究資料を所蔵する国内の施設(国立公文書館、国立国会図書館、外務省史料館)を回り、本研究に必要とする多くの資料の収集を行うことができた。なお、当初の予想と比べて資料が膨大であることが判明し、現時点においても資料の収集活動は随時行っている。 本年度(28年度)は、本研究の中間報告としての論文執筆を行い、一応の成果をあげることができた(髙澤弘明「BC級戦犯横浜法廷における日本人弁護人の費用負担問題について」日本情報ディレクトリ学会誌15号・掲載予定)。そして本研究にとっての要というべきアメリカ国立公文書館での資料調査を平成29年3月11日から25日にかけて行い、多くの文書資料や画像資料の収集を行うことが出来た。ただし、現在、これら収集資料の整理と分析作業を行っているが、重要資料の発見などもあり、当初の予想に反して分析作業に時間がかかっている。加えて発見した重要資料は、日本の国立国会図書館に所蔵していないアメリカ第8軍関係の資料で、今回のアメリカ滞在中に全て複写することが出来ず、本年度もアメリカ国立公文書館での再調査をする必要性が出てきた。そのため本研究の進捗状況は「やや遅れている」状態であると判断したが、まずは収集済みの資料を29年度の夏期休暇までに分析作業と資料整理を終え、同時にアメリカ国立公文書館での調査を行うことによって、29年度内に論文発表ができるよう鋭意努力する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度(28年度)のアメリカ国立公文書館で重要な資料を見出すことができ、その関連で次年度(29年度)も同館での未収集資の調査・採録活動を行う必要性が生じた。本資料は、日本の国立国会図書館に所蔵されていない横浜法廷のアメリカ第8軍関連の資料で、その資料的意義は横浜法廷の全容解明にとって重要なものであり、本研究の基礎資料となる。そのため滞在期間中に収集できなかった資料を、次年度の夏季休暇などを利用して再調査をする予定である。 なお次年度は本研究の最終年度であり、これまでの研究成果を論文等で公表する必要性がある。現在、執筆中のものとしては、①本研究の切っ掛けともなった柴田次郎弁護士の横浜法廷資料に関するもので、これまでに報告者が行ってきた日米の公文書館で集めた資料を基に、柴田資料の分析結果と横浜法廷の実態についてまとめる予定である。②そして本年度に行ったアメリカ国立公文書館では、多くの画像資料の収集もでき、文書資料では読み取れない横浜法廷の様子も把握することができた。この成果についても現在執筆しており、本研究のテーマの基礎的・関連的研究成果として論文または研究ノートの形で取りまとめる予定である。 以上のような研究の推進を行いつつ、本研究テーマである「BC級戦犯横浜法廷で下された死刑判決の減刑基準に関する判例分析」に関する論文発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究費は米国での調査活動費を前提としたものであるが、実際に米国出張を行ったのが年度末の3月で、その費用も帰国後の請求を行ったことから、本年度(28年度)内に予算執行ができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度(28年度)に生じた次年度使用額は、29年度に実施する米国での調査活動に充てる予定である。
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