本研究課題では、明治初年の北海道移住武家家臣団を分析対象とし、①移住武士団の比較史、②移住地での地域社会形成と既存地域社会との軋轢、③移住をめぐる文書保存と地域社会の記憶、という三つの課題を設定した。最終年度である2017年度は2回の研究会と3回の資料調査を実施した。 2017年5月13日の研究会では、2017年度の研究計画についての打合せ、及び研究成果の公開のため2018年度に出版を計画している論文集に関する討議を実施した。2017年9月23日-24日の研究会では、代表者・檜皮が「仙台藩と蝦夷地移住」というテーマで開拓移住物語が形成される歴史的背景について、協力者・工藤航平が「明治初年の北海道における郷学設立と地域社会」というテーマで有珠郷学校の設立経緯とその教育内容について、協力者・平塚理子が「仙台藩士片倉家中の北海道移住」というテーマで幌別郡に移住した白石片倉家の事例について、各自が研究報告を行なった。2015年度から3年間の研究成果は、論文集しての刊行を予定している。 また、協力者・工藤公平が2017年11月23日に東北大学で開催された学術交流連携講演会「北海道と本州のつながりを遺物から紐解く」において、「伊達市に伝わる古文書資料から読み解く幕末の伊達家とその家臣」という講演を行なった。また、代表者・檜皮も講演会に参加した。 2017年9月には一関市博物館で一関藩田村家・白老郡支配関係資料の調査を、2018年1月には北海道立文書館で開拓使貫属士族関係資料、北海道国有未開地処分法関係(アイヌ民族への土地給与)資料の調査・撮影を、2018年2月には室蘭市立図書館で同館所蔵「添田家文書」(白石片倉家の北海道移住関係資料)、及び壮瞥町教育委員会で同委員会所蔵「鎌田新三郎資料」(徳島県名東郡より伊達市長流・壮瞥町への移住団関係資料)の調査・撮影を実施した。
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