研究課題
本プロジェクトは、従来の日中関係史のなかであまり論じられて来なかった「汪兆銘」と 「汪兆銘政府」に関する基礎的研究である。研究の目的は、日中関係史のなかで大きな足跡を残した汪兆銘関係の史料を広く集め、「汪兆銘関係史料」を日本語で編集して公刊し、さらに客観的な視点から汪兆銘の人物伝記の完成を目指すことである。汪兆銘は孫文の継承者と目され、近代日中関係史のなかで重要な役割を果たした。しかし、日中戦争中、日本占領地の南京で政権を樹立したため、戦後「売国奴」「漢奸」と評価され、かれをめぐる問題は、日中関係史の「タブー」とされ、重要だと思われることも記載から抹消された。しかし、彼の思想と行動を解明することは、近代日中関係史を多面的に捉えることに不可欠な作業である。「汪兆銘関係史料」と汪兆銘の伝記の完成は、日中関係史の不足を補い、日中関係史全体像の構築に貢献するものである。2019年度中、研究代表者は日本と日本以外の地域に散在する汪兆銘の個人 史料および汪兆銘政権関連の史料を調査し、網羅的な汪兆銘関係史料集の編集に向けての準備を完成した。日本側の史料については、外交記録に含まれる汪兆銘関係の記述を調査整理し、汪兆銘関係文書の充実を図った。台湾の中央研究院近代史研究所の外交文書、国史館所蔵の記録からも汪兆銘の記録を集めた。中国語で記録された記録を日本語に翻訳し、日本語版汪兆銘関係文書の完成を目指している。史料の収集と編集以外に、厖大な史料に基づいて、汪兆銘伝記の執筆をはじめている。汪兆銘の人物研究は、日中関係史における汪兆銘の位置づけに必要な基礎作業である。多様な汪兆銘評価が混在している現在の研究状況のもと、客観的な汪兆銘の人物研究は、日中関係史を多面的に捉えることに貢献するものである。研究終了後2年以内に、これらの成果を社 会に公開し、日中関係史研究の新たな視角を貢献したい。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 図書 (2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
韓国成均館大学《中国社会科学論叢》
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多文化社会研究 = Journal of global humanities and social sciences, Nagasaki University
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現代中国 = Modern China : 研究年報
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